2017年05月31日
こんにちは~、井上です。
私は体を洗うとき、石けんを使います。
化粧品やトイレタリー商品を開発・販売しているため、テストとしてボディソープを使うことはありますが、そのたびに「やっぱり体を洗うのは、石けんがいいな~」と実感します。
では、なぜ私がそう実感するのか?
今回は、乾燥肌・敏感肌の使用者&開発者、2つの視点から、その理由を述べたいと思います。なお、最近は、石けん・ボディソープともに多種多様なものが出ていますが、一般的な定義を前提に話をさせていただきますので、あらかじめご了承ください。
肌に残ったときでも安心
ご存じのとおり、洗い残しなどの汚れがあると、肌への刺激となります。しかし、石けんは、万が一、洗い残してしまった場合でも低刺激です。
これは洗浄成分によるもので、石けんの洗浄成分はアルカリ性なので、時間が経つと肌の上で中和されるからです。中和されると無害になります。
一方、ボディーソープの多くは石油系界面活性剤のため、中和されにくく、洗浄機能を保持し続けやすい性質があります。
すすぎがカンタン
石けんで作られた泡の大きな特長は、その泡切れの良さです。難しい話は省きますが、水道水で流すと、石けん成分は泡とともに簡単に流される構造なのです。
だから、シャワーでさっと流すだけでOK。ゴシゴシ洗い流さなくてもいいし、肌残りもありません。
体の汚れをしっかり落とすだけの洗浄力がある
石けんは、90%以上が洗浄成分(石けん素地)で構成されます。一方、ボディソープは、多くても30%程度で、残りの70%は水です。そのため、石けんのほうが圧倒的に洗浄力が強いです。やはり、体を洗うことが目的なので、洗浄力の強さは大切な要素です。
ただ、洗浄力の強さは、乾燥肌や敏感肌にとっては刺激にもなりえます。ですから、「石けんならなんでもいい」というわけではありません。「洗浄力が強い」と感じる場合には、使う量を減らしたり、同じ石けんでも『機械練り石けん』ではなく、比較的洗浄力がまろやかな『枠練り石けん』を使うなどの工夫が必要です。
機能性を考えると、石けんはコストパフォーマンスが高い
容器には、コストがかかります。石けんの場合は、(荒っぽい言い方ですが)外装は紙でOKです。その場合、かかるコストは数円で済むでしょう。
ボディソープの場合は、紙というわけにはいきません。使うためにはポンプ容器などが必要です。この容器は、ピンキリですが、最低でも紙の20倍します。
このように、用量の多さと容器によって、体を清潔にするため以外のコストがボディソープには余分に必要となります。つまり、同じ価格なら、石けんのほうがそれだけ中身にお金をかけることができます。最近は格安のボディソープがドラッグストアで売られていますが、「一体、中身はいくらなんだろう?」と不思議でなりません。
100円均一の店でもたまに売られています。超がつくほど敏感肌の私は、さすがにテストでも怖くて使い続けることができませんが(苦笑)
使い勝手が良いこと
敏感肌の私は、体を洗う前に、体全体に洗浄剤を塗ります。摩擦を無くすためです。その後、背中などの皮脂の多い部位はボディ用タオルで洗います。タオルと体、双方に塗っておけば、肌に摩擦が起きることはほぼありません。
(このように体の部位によって『手』と『ボディタオル』で洗い分ける方法は、小さいお子さんやアトピー肌・敏感肌の方などには特におすすめです!)
ボディソープだと、2プッシュぐらいを手に取って体に広げるものの、それだけでは足りないので、もう2プッシュ足そうと思っても、このとき手はボディソープでヌルヌルしています。そのためポンプが押しにくい・・・・・・。
私の『体の洗い方』によるところが大きいのですが、私にとってはボディソープは使いにくいのです。その点、石けんならそのまま手に持って塗ればいいだけです。わざわざ補充する必要はありません。とても簡単で、効率的です。
洗い上がりの差
ボディソープの洗浄成分は、界面活性剤です。中でも、量産されているものは、石油系の界面活性剤です。石油系の合成界面活性剤は、その『くっつきやすい』という性質上、体を洗った後もどうしても肌に残りやすいものです。特に、石けんと比較すると使用感がヌルヌルするのです。このヌルヌルが気持ち悪い!まぁ、使用感は個人の感覚によるところが大きいので、これはさておき、このヌルヌルには他の問題があります。
実は、ヌルヌルするのは、石油系の界面活性剤が残っている証拠です。残留しているということは、それが肌への刺激となりえます。私は界面活性剤そのものが肌に悪いとは思っていませんが、肌にとっては異物です。特に、私のような敏感肌にとっては、このような異物が肌の上に残ることは避けたいところです。
売り方の差
化粧品メーカーによっては、このヌルヌルをあたかも保湿効果のように、「洗い上がりもしっとり」と宣伝しているところがあります。何度も言いますが、これは保湿効果でしっとりしているのではなく、洗浄目的で配合された界面活性剤が残っているのです。
石けんの起源は、紀元前3000年ごろの古代ローマだと言われています。体に使う商材としては断トツで古い歴史を持っています。そのため、処方も完成されており、機能性や安定性が確立されています。そういった意味では、化粧品の中でも非常に優れた商品と言えます。
ただ、これは、裏を返せば「差別化が非常に難しい」ということになります。つまり、どこもかしこも似たり寄ったりの商品になるということです。製造法も『機械練り』と『枠練り』の2種類しかありません。成分のほとんどが石けん成分となるために、他に有効成分を配合することができません。もし配合したとしても、石けんそのものの容量が小さいために、大して配合できません。そのため、洗浄効果以外の目的を持たせることができません。
「高価なオイルを贅沢に配合」と謳ってあると、オイルを塗るのと同等の保湿効果を期待してしまいますが、そこまでは配合できないのです。後は、せいぜい色や香り、パッケージを変えることぐらいです。香りに関しても、無理やり天然由来のものを使って、付加価値を付けている石けんをよく見かけますね。当然、洗浄効果や安全性とは無関係です。
そのため、生産者から見ると、石けんは日常的に使われる『おいしい市場』でありながら、手詰まりだったのです。
そこに、新たにボディソープが生まれました。ボディソープ最大のメリットは、洗浄成分が30%程度で残りの70%は水分だということです。これは、容量の70%を有効成分で置き換えることができるということです。つまり、売り文句をたくさん増やせるのです。
だから、ボディソープでは、洗浄以外の効果を宣伝することがよくあります。保湿効果なんかは、もう定番ですよね。
本来、洗浄効果と保湿効果は相反するものです。だから、一緒にするとどちらかの効果が落ちます。もしくは、双方の効果が著しく落ちます。これは当然です。『洗浄』は、汚れ以外にも肌の上にあるものを落とすことが目的です。
『保湿』は、肌のうるおいを守るために、保湿成分や油分を肌に残す必要があります。これを完全に両立することは不可能です。洗浄効果が高ければ、油分は落ちてしまいます。逆に、油分が残るということは、他の汚れや皮脂も残るということです。
でも、ちまたのボディソープには、この相反する効果が謳われています。
ただでさえも洗浄力が弱いのに、こんな余計なことしたらどうなるんでしょうか?
想像してみれば分かると思いませんか?
このようにボディソープは、売り手のメリットによって生まれた一面があるように感じます。
実際に、こんなことも
昨年の夏、某大手日用品メーカーが、「8年ぶりに新商品を発売する。目標は、現在ボディソープ市場2%から、2019年に10%のシェアを拡大して第3位を目指す。」と、新商品発売の場で発表しました。そこまでは普通です。
しかし、この件が『週刊ダイヤモンド』(2016年9月3日号/ダイヤモンド社)で記事にされており、それを読むと、その某メーカーがボディソープ市場を狙った理由に驚きました。形状や目的が近いシャンプーなどのヘアケア市場と比較して、メーカー幹部の人からその理由が語られていますので、簡単に紹介しますね。
参入障壁が低く、コストパフォーマンスが良い市場を狙う
確かにボディソープが『低関与商品』というのはうなずけます。「このボディソープじゃないとダメだ!」という声は、あまり聞きません。ニオイは別として、よほどのこだわりがない限り、一般的にはドラッグストアやスーパーなんかで特売になっているものを買う、という感じじゃないでしょうか?
ただ、だからと言って、低関与商品が参入理由にはならないように思います。だって、商品に対する関心が低いから乗り換えが起きやすいというのは、裏を返せば、自社の商品も乗り換えが起きやすいということです。つまり、自社商品も継続して使ってもらえないということです。
その結果、価格勝負になって、品質や機能など、消費者のメリットを叶えにくい側面も出てきます。そのため、私からすれば、これはボディソープ市場に力を入れる理由になっていない気がしますけどね。
さらに、記事はこう続きます。
「ボディソープの方がヘアケアより断然戦いやすい」
ヘアケア市場には強大なライバルが国内外にたくさん存在します。
記事中には、化粧品ナンバーワン企業をはじめ、花王やP&Gジャパンなどが挙げられています。それに比べると、ボディソープ市場は手薄だそうです。
でも、ボディソープ市場にも大手がいます。
記事中にもボディソープ市場には、シェア約25%を占める絶対王者・花王の『ビオレユー』、シェア約15%を占めるユニリーバ・ジャパンの『ダブ』が挙げられています。まあ、確かにわざわざ強いところと戦う必要はありませんが、両方とも大企業ですから、競争相手として戦いやすいとは思えませんけどね・・・。
要は、某メーカーがボディソープ市場に参入した決め手は、以下の2点だと言えるでしょう。
【1】ボディソープが低関与商品だから、新規客獲得コストが安い
【2】ライバルがショボイ
もし、これが本当なら、ボディソープは非常に価値のない商品カテゴリーということになります。
ボディソープは、人から関心を持たれない『低関与商品』であり、低価格競争に陥りやすい。その結果、効果や中身はどれも代わり映えしなくなり、価格勝負のみになっていく。中身に特性がないために、さらに人は無関心になっていく悪循環。
さらに、無関心なので、人が能動的に調べることもなく、受け身による認識しかないために、テレビ広告などのマス広告を使う必要があり、広告費が増大。結果、さらに中身にお金をかけることができなくなる。
まさに、負の連鎖。
そして、ボディソープを販売している企業は、ヘアケア市場に比べるとショボイ。
その結果、使う側のメリットは安価であることのみで、中身や効果に関するメリットは低いということになります。
この記事にウソはないと思いますが、製造メーカーの幹部がこの考え方なら、『ボディソープ=安いだけの粗悪な商品』だと言われているように感じました。なんだか、ボディソープを使いたくなくなります・・・。
だから、私は石けんで体を洗っています
以上の理由から、私は石けんで体を洗っています。
それも、自分で作った石けんです。
『やさしい石けん』は、保湿成分を配合し、石けん特有の強い洗浄力を調整しました。その分、枠練り石けんの特徴どおりに、水分を多く含むため、溶けやすい傾向はありますが、使った後きちんと水切りをしていただければ大丈夫です。
だから、乾燥肌や敏感肌で、体にかゆみを感じる方は、体に合うものがなければ、やさしい石けんで体を洗うことをおすすめします。
追伸
『ソープ』や『石けん』と名前がついているものでも、私が今回お話した『石けん』とは異なるものがあります。原材料を見ると、主成分が『石けん』かどうか分かります。一番分かりやすいのは、『石けん素地』と書かれたものです。商品名や売り文句に惑わされず、ぜひ、内容成分もチェックしてお使いください。
最新の記事
月別アーカイブ
目元の乾燥小じわに終止符を!アクアテクトゲルを使った簡単乾燥小じわ対策
メールマガジンバックナンバー
2024/11/19
化粧水や乳液で逆に乾燥?見直したいアクアテクトゲルとの併用方法
メールマガジンバックナンバー
2024/11/12
そのささくれが手の乾燥の合図かも!ささくれの正しいケア方法と予防方法
メールマガジンバックナンバー
2024/11/05
無香料だからこそ叶えられること!アースケアの本質的な商品作り
メールマガジンバックナンバー
2024/10/29
アクアテクトゲルは、赤ちゃんや子供にも使える?
メールマガジンバックナンバー
2024/10/22
ステロイド外用薬を正しく使う3つのポイント!アクアテクトゲルとの併用方法も◎
メールマガジンバックナンバー
2024/10/15