2023年04月01日
最近、とある業界NO.1のインターネットメディアの関係者と話す機会がありました。そこで、私がずっと疑問に思っていたことを質問しました。
その質問とは、「なぜ、読者のメリットにならない行動をするのか?」です。
たとえば、美容メディアの場合だと、
など。
これらは、どれもウソや誤解を誘っています。
セラミドは、一般的な保湿成分です。
もし、すごい効果(体内のセラミドが増えるなど)があれば、それは薬効となり、化粧品に配合することはできません。
オーガニック化粧品は、通常の化粧品に少量のオーガニック成分を加えただけなので、一般的な化粧品と同じです。そのため、通常の化粧品と比較して、特に肌に優しいわけではありません。
オーガニックの良さは別にあるのに、誤解を誘っています。
余談ですが、これは「オーガニックコットン」や「オーガニック食品」にも同様のことが言えます。オーガニックだからと言って、特別、体に良いわけではありません。
美容成分は、肌の奥深くまで浸透しません。この場合の肌深くというのは、真皮より深い部分を指します。
もし、真皮まで浸透した場合、血中にまで入り込み、もはや化粧品の範疇ではなくなります。
化粧品は、角層までしか浸透してはいけません。
薬機法にも定められています。
そのため、テレビCMや雑誌広告で、「肌の奥深く」と表現されている近くに必ず「※肌の奥深くとは角層までのことです」と但し書きが書いてあります。
わずか0.02㎜の角層を「奥深く」と表現するのは、ほぼ嘘ですよね。
美顔ローラーを使っても肌はリフトアップしません。
ましてや小顔にはなりません。
そもそもローラーとは、伸ばすために使われます。子供のおもちゃで粘土セットについているローラーと同じです。
これは粘土を平たく伸ばすために使います。土木(アスファルト工事など)で使われるローラーも地面を伸ばしてならすために使われます。
このような用途で使われることを考えると、顔に美顔ローラーを使うと顔の皮が伸びる結果となります。
皮が伸びるとリフトアップではなく、たるみが生じてしまいます。
小顔に関しては、顔の大きさは骨格で決まります。
顔を小さくするには、顔や頭の骨を動かして、固定する必要があります。
当然、ローラーでコロコロしただけで、そんなことはできません。
余談ですが、マッサージや美容針にも小顔効果はありません。
ローラーと同様に、骨を都合よく動かして、それを固定することができないからです。
特に頭蓋骨は、絶対に人の力で動きません。
ヒト幹細胞培養液は、その名の通り、ただの培養液です。もちろん、この中にはいろいろな成分が溶け込んでいますが、所詮、培養液なので成分の濃度も低く、特別な成分でもないので、老化防止効果はありません。
そもそも老化防止は化粧品の範疇外なので、製造販売を認められていません。
というか、私の知る限り、老化防止効果のある商品は、今のところこの世に存在しません。
もちろん、適切なスキンケア、バランスの取れた食事、適度な運動と睡眠などを心がけることで老化を遅らせ、健康で若々しい状態を保つことは可能です。
このようなことは、少し、その業界に詳しければ、すべて分かることです。
特に、情報を発信している人なら、知っているはずです。
でも、このような間違った情報が世の中にあふれています。
今回、私が出会ったメディアは、情報自体は正しいものでした。
ただ、サイトに訪れた人にミスリードをさせる仕組みがありました。
具体的には、読者が知りたい情報ではなく、無関係な情報に誘導することです。
たとえば、ある情報を見たいと思ってクリックすると、画面いっぱいに広告バナーがでます。
そのバナーをクリックしないと、欲しい情報が手に入らないのです。
他にも、見たいコンテンツの関連情報のように見せかけて、クリックさせる広告だったり。
情報の中にも、広告がたくさん差し込まれていて、どれが情報で、どれが広告かが判別しにくいのです。
これは、読者にとって、非常に迷惑だし苦痛です。
で、冒頭の質問をぶつけてみました。
すると、担当の方曰く、「おっしゃることは分かります。でも、広告をクリックしてもらうことが収入源なので、とにかくたくさんの人に来てもらって、広告を押してもらわないとダメなんです。」とのこと。
これは理解できます。
ウェブメディアだけではなく、テレビや雑誌、新聞も同じです。
広告収入で運用されているので、広告を見てもらわないと事業が成り立ちません。
そこで、次の質問をしました。
「読者のメリットと、広告をクリックしてもらうこと、どちらを重視しているかを教えてください。」
返ってきた答えを聞いて、驚きました。
「少しでも多くの広告をクリックしてもらうことが一番優先していることです。読者のメリットはほとんど考慮していません」
まぁ、この流れだと広告のクリックを優先しているとは思っていましたが、「読者のメリット」を考慮していないと断言されるとは思っていませんでした。
このあとにもいくつかのメディア関係者と話す機会があり、同じことを聞いたのですが、おおむねよく似た回答でした。
これだけ聞くと、「メディア側が嘘や誤解を招いたとしても、とにかく広告収益を得たい悪者」に見えますが、いろいろと話を聞くうちに、もうひとつ気づいたことがありました。
それは、一定数の人は、「嘘や誤解を招く情報を望んでいる」という側面があることです。
たとえば、スキンケアの業界でも、「セラミド化粧品を使うと、体内(肌)のセラミドが増えて、肌がきれいになるんだ!」「ヒト幹細胞培養液で肌が若返るんだ」という情報を望む人たちが一定数いるのです。
逆に、そういった人たちは「セラミドの効果は、通常の成分とそれほど変わらないですよ」「ヒト幹細胞培養液に、若返りの効果はないですよ」と聞くと、苦痛や絶望を感じるようです。
私は個人的に、たとえ自分に不利益でも真実を知りたい欲求が強いので理解できないのですが、「嘘でもいいから夢を見たい」と感じるようです。
その証拠に、仮に嘘や誤解を誘う情報を掲載したとしても、クレームは来ないとのこと。
つまり、嘘や誤解を誘う情報にデメリットどころかメリットを感じる人がいるということです。
今までは、嘘や誤解を誘うスキンケア情報を見ると、ある種の怒りのようなものがこみあげてきたのですが、この経験から、「たとえ、間違った情報でも、場合によってはメディアも読者もお互いメリットを感じ合ってるんだ」と考えるようになり、いくらか冷静になりました。
だからといって、嘘や誤解を誘う情報を広めるのはダメです。
また、読者の立場で言うと、適切な情報を読みやすくしてほしいです。
私自身はウェブメディアを見ていて、急に、女性が下着姿でソファに寝ている画像と真っ黄色な歯のドアップが交互に表示されて不快でした。
記事と無関係な広告はいりません。
そもそも無料だったら、仕方がないのかもしれませんが。
後で聞いたのですが、どのような広告を見せるかも設定できるようで、多くの場合は、クリックされやすく、報酬額が高いものを選んでいるようです。
個人的には、怪しすぎて絶対クリックしたくないですけどね。
最後に。
すべてのメディアが読者のメリットを考えず、嘘や誤解を誘う情報で人を集め、広告をクリックさせることを優先しているわけではありません。
本当に、読者のために正しい価値のある情報を配信しているメディアもあります。
残念なのは、あくまで私見ですが、有名なメディアほど収益を重視しており、読者のことを考えているメディアは小規模で無名なところが多いと感じます。
これは、大企業を優先的に上位表示するgoogleの意向も影響しており、無料で検索サービスを利用させてもらっている我々からすると仕方ないことですが。
こう考えると、「無料」と聞くと無条件でお得と考えがちですが、実際はメリットよりデメリットの方が大きいかもしれません。
私たちの業界でも、「無料サンプル」の費用は、結局は愛用者の方たちが負担していることになりますしね。
本来、その商品を気に入って愛用している人が一番お得になるべきだと思いますが、無料サンプルの場合は、サンプルだけを使ってそのあと何も買わない人が一番得してます。
「無料」は警戒したほうが良さそうです。
また、メディア担当者の方たちが、「本当は我々も読者に役立つことを一番に考えた情報だけを発信をしたい」と本音をこぼしたときの何とも言えないツラそうな表情が印象的でした。
※この内容は、手作り新聞132号(2023年3~4月号)に掲載したものです
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