肌から体に有害な物質が吸収されるという「経皮毒(けいひどく)」。
本当なら恐ろしい話です。
私たちが日常的に体に触れるものは、たくさんあります。
特に経皮毒が懸念されるものは、以下だと言われています。
- シャンプー
- 洗剤
- おむつ
- ナプキン など
特に女性にとって、使用頻度が高く、身近なものが多い傾向にあります。
それだけに、経皮毒について不安を抱えることが多いでしょう。
不安は大きなストレスになり、毎日が憂鬱になります。
そこで、あなたの不安を取り除くために、経皮毒について真実を検証しました。
この記事を読んで、不安を取り払ってスッキリしてください。
1.経皮毒とは
経皮毒(けいひどく)とは、日常使われる洗剤や日用品、化粧品などを使用した際、皮膚から有害性のある化学物質が吸収されることを指します。
経皮毒は、肝臓や子宮など体内に蓄積して健康被害を与えるとされています。
経皮毒は、健康に関する書籍に用いられる表現で、学術用語ではなく健康本の著者がつくった「造語」です。
2005年に経皮毒について書かれた書籍が発売され、翌2006年に一気に広まります。
2020年の現在は当時に比べて、経皮毒への関心度が薄れていますが、いまだに根強く関心を持っている人がいます。
私は2000年に化粧品メーカーとして独立したのですが、その前職である化粧品製造企業で働いていた時に経皮毒に関する噂を耳にしていました。
「合成界面活性剤を使っている人の子宮からは甘酸っぱい化学物質のニオイがするらしい」という内容でした。
合理的な理由はなかったのですが、「何だかよくわからないけど、怖いな」と感じたことを覚えています。
経皮毒の書籍がでるずいぶん前で、まだ経皮毒という言葉はありませんでしたが、まことしやかに噂されていました。
当時の私は知識も経験も浅い上に、先輩研究者から聞いたこともあって、不覚にも経皮毒に何の疑いも持ちませんでした。
2.経皮毒の真実
結論から言うと、経皮毒はウソです。
その理由は、以下の3つです。
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詳しく見ていきましょう。
2-1.経皮毒を証明するエビデンスがない
「経皮毒」が本当なら、厚生労働省が黙っているわけがありません。
当然、経皮毒の害を検証する実験が行われ、エビデンスが大量にあるはずです。
でも、経皮毒の正当性を訴えるエビデンスはゼロです。
厚生労働省は、ピクリとも動いていません。
私は化粧品開発にも携わっているために、化粧品の成分や処方にまつわるエビデンスを参考にします。
独立した2000年当初は、インターネットがそれほど普及しておらず、実験結果や論文を読むことは非常に困難でした。
今は、簡単にアクセスができます。
それが、「Google scholar」です。
Google Scholar(グーグル・スカラー)は、ウェブ検索サイトのGoogleの提供する検索サービスの一つ。
主に学術用途での検索を対象としており、論文、学術誌、出版物の全文やメタデータにアクセスできる。
Googleはそのデータベースのサイズを公開していないが、第三者機関の調査によれば、2014年5月時点、約1.6億の文章が含まれると推定される。
学術記事を専用に検索できるので非常に便利です。
実際に、「経皮毒」を検索してみました。
その検索結果がこれ「経皮毒」です。
検索結果では、「経皮毒」という単語は一切出てきません。
これは、経皮毒に関する実験や研究、論文は一切存在しないことを証明しています。
つまり、経皮毒が何の根拠もないウソであることが分かります。
もし、あなたが洗剤や日用品、化粧品などで不安なことがあれば、「Google scholar」を使ってエビデンスを検索してください。
気になる成分名や単語を入れるだけでOKです。
すべてのエビデンスが正しいという訳ではありませんが、情報誌やブログに比べて、情報の信頼性は高いです。
もし、さらに信頼性を高めるなら複数のエビデンスを読むといいでしょう。
「Google scholar」をクリックして、検索してみてください。カンタンですよ。
2-2.経皮毒を否定するエビデンスがある
経皮毒を立証するエビデンスはありません。
ただ、経皮毒を引き起こすとされる「合成界面活性剤の安全性」を立証するエビデンスはいくつかありました。
例を一つ出しましょう。
合成界面活性剤の一種である「アルキル硫酸エステル塩の安全性について」を参照します。
- 歯磨き粉、シャンプー、洗剤などに使われるアルキル硫酸エステル塩を剃毛したラットの背部皮膚に塗布
- 15 分間接触させた後に 37℃の温湯ですすぎ、非密閉型保護貼布環境下で、24 時間目までの排泄量と体内残
- 存量を測定して,それらの値から吸収量を推定
この実験で分かったことは、以下だと報告されています。
- 24 時間目までの吸収量は、投与量の約 0.3%で皮膚からの吸収性は極めて低いことが、各種評価結果で確認されている
- 体内に取り込まれたアルキル硫酸エステル塩の代謝,排泄については、投与後速やかに代謝され,大半が尿中に排泄されることが確認されており、体内蓄積性は低いと結論されている
- アルキル硫酸エステル塩には変異原性,遺伝毒性,発ガン性のいずれも認められない
さらに、生殖毒性や発生毒性あるいは催奇形性といった悪影響も確認されていない
最後のまとめには、
「アルキル硫酸エステル塩については、僅かな経皮吸収はあってもほとんど体内に蓄積することはなく、想定されるあらゆる経路からの曝露量の合計に基づくリスク評価においても、ヒト健康影響への懸念はない」と結論付けられています。
※参考:青山博昭「アルキル硫酸エステル塩の安全性について」より
簡単に言うと、
合成界面活性剤であるアルキル硫酸エステル塩を直接肌に付けても、ごく微量しか浸透しない。
浸透した微量の合成界面活性剤は、ほとんどが尿によって排出。
その後、いかなる健康被害も認められていないとのこと。
日常で洗剤やシャンプーを使う際は、合成界面活性剤だけを肌に塗ることはありません。
水分や他の成分も混ざった状態で使います。
そのため、上記の実験ほど体内に吸収されることもありません。
仮に体内に吸収されても尿として排出されて無害です。
以上から、合成界面活性剤でも安全性が立証されており、経皮毒がウソである証明になります。
2-3.経皮毒の論理が破綻している理由
経皮毒の前提は、「化学成分である合成界面活性剤は、体に吸収される」です。
合成界面活性剤が体内に取り込まれることで健康を害するという考えです。
合成界面活性剤が体内に取り込まれる根拠は、2つあります。
- 合成界面活性剤の分子量が小さいので、高濃度で体内に吸収される
- 合成界面活性剤は、肌のバリア機能を破壊して体内に吸収される
詳しく見ていきましょう。
①「合成界面活性剤の分子量が小さいので、高濃度で体内に吸収される」は間違い
合成界面活性剤は、体の内部に取り込まれる根拠に「分子量の大きさ」が論じられます。
分子量の大きさによる経皮毒の根拠
細胞膜は、分子量500以下の分子量であれば通過する。 だから、分子量500以下の合成界面活性剤は、細胞膜を通過して体に高濃度で吸収される。 |
まず、分子量500以下の合成界面活性剤が細胞膜を通過するエビデンスはありません。
近しいものだと、千葉大学薬学部の山口 明人氏と 澤井 哲夫氏の「抗生物質の細菌細胞膜透過機構」に、「腸内細菌などでは、分子量500~600程度までの大きさの溶質分子を通過させる」との記載を見つけましたが、細胞膜や合成界面活性剤には触れていません。
他には、東京医科歯科大学が公表している資料「細胞膜」によると、「ギャップジャンクションの穴(1.5 nm)は、分子量 1000 以下の分子を通すことができる」というエビデンスはありますが、これは細胞間同士の連結部の話で、細胞膜を通過することではありません。
残念ながら、分子量500以下の合成界面活性剤が、高濃度で体内に吸収されるエビデンスを見つけることができませんでした。
万が一、分子量500以下の合成界面活性剤が細胞膜を通過すると仮定してもおかしなところがあります。
合成界面活性剤は、目的があって配合されます。
代表的な役割は、「乳化」です。
乳化とは、簡単に言うと水と油が混ざった状態を維持することです。
つまり、水と油と合成界面活性剤が合体した状態です。
だから、合成界面活性剤の分子量が小さくても、水や油と合体するので、分子量が大きくなります。
そのため、合成界面活性剤が細胞膜を通過することはありません。
分子量の大きさで細胞膜を通過すると仮定して、合成界面活性剤100%原液を肌に塗りこんで、そのまま放置すれば、少しは体内に吸収されるかもしれませんが現実的ではないですよね。
そもそもシャンプーの合成界面活性剤は、数%程度しか配合されていないので、高濃度の合成界面活性剤を肌につけることは不可能です。
②「合成界面活性剤は、肌のバリア機能を破壊して体内に吸収される」は間違い
大阪府立公衆衛生研究所の「界面活性剤の皮膚常在菌への影響」によると、「合成界面活性剤が肌のバリア機能を低下させるというエビデンスがありました。
このエビデンスは、合成界面活性剤が「常在菌の発育を阻害する」ことを立証しています。
そして、常在菌が減少することがバリア機能低下の一因と結論付けています。
合成界面活性剤が直接バリア機能を低下させるのではなく、あくまで常在菌の減少がバリア機能につながるとのこと。
合成界面活性剤がバリア機能を破壊するとまでは言えない弱いエビデンスです。
そのせいか、結果および考察の締めくくりには、以下の記載がありました。
- 「皮膚上の常在菌を殺菌してバリア機能の低下をおこす要因のひとつとなる可能性が考えられる」
- 「濃度によっては、病原性菌は発育できるが皮膚常在菌は発育できない状態が出現する可能性が考えられる」
つまり常在菌の減少には言及しているものの、合成界面活性剤がバリア機能を破壊すると言い切っていません。
冒頭の結論部分でも、「抗菌性を有する陽イオン系以外に陰イオン系や非イオン系の一部に皮膚常在菌等に対する生育抑制が見られ、皮膚常在菌への影響が示唆された」と「一部」「影響が示唆された」というあいまいな表現が使われています。
もし、このエビデンスが正しく、常在菌が減ることでバリア機能が破壊されるとするなら、以下の要素も危険ということになります。
常在菌を減らす原因
- ぬるま湯での洗顔
- 長時間の入浴
- 肌の乾燥
- 美顔ローラーやパッティングによる肌への刺激
- 化粧品使用時の肌への摩擦
上記の行為は、常在菌を減らす原因となります。
これらの行為によって、常在菌が減り、バリア機能が破壊されてるというのは無理がある考えです。
また、合成界面活性剤には、乳化や洗浄の役割があり、その役割を果たしたあとに、バリア機能を破壊する力は残っていません。
バリア機能を破壊するには、本来の目的を果たした後でもその機能が維持できるほど、非常に大きな力が必要です。
もし、バリア機能を破壊する目的でつくられた合成界面活性剤が存在するなら、それも可能かもしれません。
でも、常識的に考えて、健康に害を与える危険な成分を厚生労働省が認可するわけがありません。
もちろん、そんな成分を化粧品に配合することはできません。
厚生労働省の「化粧品基準」でもしっかりと定められています。
合成界面活性剤が、体内に吸収されないことは、日常の経験からも確認できます。
例えば、手に油汚れがついて、それを石けんで洗うとします。
石けんには合成界面活性剤が配合されています。
手に石けんをつけると、油汚れは合成界面活性剤と混ざり、水溶性の特性を得ます。
油汚れが水と混ざりやすくなることで、本来、水では落としにくい油汚れがすっきりと洗い流せます。
洗い流したあとは、油も合成界面活性剤も残っていません。
むしろ、皮脂まで流れ落ちてしまって、肌が突っ張ります。
もし界面活性剤が残っていたら、ヌルヌルします。
この過程で合成界面活性剤が肌内部に侵入しようとすると、一度油と結びついた後、さらに水とくっついた界面活性剤が洗い流されることなく、水と油と分離する必要があります。
でも、一度、油や水とくっついた合成界面活性剤は、そう簡単には離れません。
つまり石けんを使っても、合成界面活性剤が体内に侵入することはありません。
これは、石けんだけでなく洗剤やシャンプーでも同様です。
3.合成界面活性剤は、安全になっている
洗剤、シャンプー、石けんなどに使われる合成界面活性剤は、過去に安全性のテストも行われその安全性が立証されています。
さらに現在は技術の発展によって、合成界面活性剤の安全性も高められています。
3-1.シャンプーに配合されていたラウリル硫酸ナトリウムは、現在ほぼ使われていない。
「経皮毒」が語られる際、紹介されている「ラウリル硫酸ナトリウム」という界面活性剤があります。
ラウリル硫酸ナトリウムは非常に強力な界面活性剤であり、強力な脱脂作用があります。
2%程度の濃度で肌への刺激。
5%濃度以上では保湿成分と考えられているタンパク質およびアミノ酸の溶出が増し、乾燥および落屑を引き起こすことが明らかにされています。参照:化粧品成分オンライン「ラウリル硫酸Naとは」
実際に人間の肌にも洗い残しがあると、かぶれや炎症を起こすことがあります。
そのため、肌に刺激を与える合成界面活性剤の代表として、経皮毒の関連本に紹介されています。
現状、ラウリル硫酸ナトリウムが配合されたシャンプーはほとんどありません。
通常は、ラウリル硫酸ナトリウムの代わりに、改良された皮膚刺激性の低い「ラウレス硫酸ナトリウム」を配合します。
名前は似ていますが、皮膚への刺激はかなり低い合成界面活性剤です。
ラウリル硫酸ナトリウムのようにかぶれや炎症を起こすことはありません。
このように合成界面活性剤の安全性は、日々高まっており、どんどん安全性の高い成分が開発されています。
経皮毒の存在を証明するために使われていたラウリル硫酸ナトリウムですが、実は皮膚への吸収性はほとんどありません。
つまり、ラウリル硫酸ナトリウムは経皮毒ではなく、単に強すぎる洗浄効果が肌への刺激となっていただけでしょう。
3-2.洗剤の安全性は、膨大な実験によって実証されている。
1960年代から1970年代にかけて、「洗剤問題」は注目されました。
合成洗剤の安全性問題は国会でも大きく取り上げられて、国を初め東京都、神奈川県、大阪府など、多くの自治体が実勢調査や確認試験を実施しました。
その結果、1979年6月の国会での議員の質問主意書に対する当時の総理大臣の答弁書で「誤飲等洗浄の目的を著しく逸脱した場合以外は、人体に対する安全性は問題ない。」と国としての見解を示しました。
1980年以降、専門家の間では、「洗剤の安全性論争は解決した」と考えられています。
今では安全性の再確認および技術改良によりすでに解決し、問題のないことが明らかにされています。
※参考:国立科学博物館産業技術史資料情報センター主任調査員・中曽根弓夫氏「石鹸・合成洗剤の技術発展の系統化調査」
このように経皮毒の書籍がでる前に、洗剤の安全性は立証済みでした。
それにもかかわらず、経皮毒という間違った考えが広まってしまいました。
安全性の高い洗剤をまじめに開発・販売している人たちにとっては、非常に残念なことだったと思います。
4.経皮毒を広める目的
経皮毒を広めることには目的があります。
それは、特定の人間が利益を得るためです。
経皮毒を信じることで、「合成界面活性剤には毒性がある」と信じた人は、合成界面活性剤が使われている製品を避けます。
そして、「合成界面活性剤が使われていない製品」を購入することになります。
経皮毒を信じる人が増えることで、合成界面活性剤を批判している商品が売れて、そのような商品を売る企業が儲かります。
ただし、経皮毒で不安を煽る悪質な企業は一部です。
ほとんどの企業は、まじめに商品を開発・販売していることをご理解ください。
4-1.経皮毒で儲かるスキンケア関係者
合成界面活性剤入りの化粧品を使うと経皮毒によって健康被害が出るため、合成界面活性剤を使わない化粧品や美容法を推奨する方法が行われています。
化粧品の場合は、合成界面活性剤を配合せずにつくるのは困難なので、特定の合成界面活性剤が配合されていない場合が多いです。
経皮毒で儲かるスキンケア関係者は、たとえば以下が考えられます。
- 特定の合成界面活性剤を配合していない無添加化粧品・オーガニック化粧品・自然派化粧品を販売する企業
- 肌断食のように化粧品の使用を禁止する美容法の提唱者
- 美顔ローラーなど美容機器メーカー
過去には、合成界面活性剤の一種のラウリル硫酸ナトリウムは「経皮毒」であると恐怖心を煽って連鎖販売の勧誘が行われていました。
その手法は、以下のとおりです。
①「あなたの使っている商品にはラウリル硫酸ナトリウムが含まれている」と説明する ラウリル硫酸ナトリウムは「経皮毒」で色々な有害性があると強調する ↓ ②経皮毒の怖さを理解させたのち、「経皮毒」が起きない自分が販売する商品を勧める |
このように経皮毒というウソで恐怖心を煽って商品を売るという行為は悪質です。
でも、まだ続きがあります。
勧められている商品の主成分は、「ココアルキル硫酸ナトリウム」という成分でした。
このココアルキル硫酸ナトリウムというのは原料名からの名称で、主成分はラウリル硫酸ナトリウムです。
名前が違うだけで、中身は同じです。
つまり、「お菓子は体に悪いから、野菜ジュースから糖分を摂れば体にいい」と言っているようなものです。
実際は、どちらにも糖分が含まれており、体への影響は同じです。
その結果、論理的意味がなく恐怖心を煽る用語である「経皮毒」を使った販売方法は、経皮毒に関する健康本が出版された2年後の2008年に経済産業省から処分対象になりました。
※参考:日本洗剤石鹸工業会「「他社の商品を攻撃して自社商品を売る」“危険です商法”」
日本家政学会誌「安全性・環境問題に関する消費者情報の課題―2.5 次情報中の誤情報に対応するために―」
4-2.経皮毒で儲かる洗剤業界の関係者
化粧品と同様に、「洗剤」も合成界面活性剤抜きで作るのは困難です。
そのため、特定の合成界面活性剤が配合されていない洗剤を販売する手法が一般的です。
経皮毒で儲かるのは、たとえばこんな洗剤業界の関係者だと考えられます
- 特定の合成界面活性剤が配合されていない無添加洗剤・オーガニック洗剤・自然派洗剤を販売している企業。
- 洗剤を使わずに、洗える商品を販売している企業
4-3.経皮毒で儲かる日用品業界の関係者
経皮毒は、ナプキンや紙おむつでも起こると思われています。
経皮吸収倍率を体の部位別でみると性器が42倍であることがその根拠です。
下記の図は、成人にヒドロコルチゾン(基剤、ワセリン)を適用した後の尿中排泄量を検討した試験結果です。
確かに、性器は42倍で突出した倍率になっています。
これは、「皮膚」ではなく「粘膜」であることが理由です。
皮膚より粘膜の方が、経皮吸収率が高くなります。
ただ、これは医薬品を使ったテストです。
医薬品は、体に吸収させて患部まで届けることが目的です。
だから、化粧品とは真逆で、「いかにバリア機能を通過して、少しでも多くの有効成分が体内に吸収させる」かが大切です。
そのため、この実験の倍率が、そのまま当てはまることはありません。
当然、いくら性器に触れる機会や時間が多いとはいえ、ナプキンやおむつの素材が体内に吸収されることはありません。
経皮毒と経皮吸収倍率を組み合わせて経皮毒による恐怖心を煽ることが目的です。
経皮毒で儲かるのは、たとえばこんな日用品業界の関係者だと考えられます
- 布おむつや布ナプキンを販売している企業
- オーガニックコットンやヘンプ(麻)の素材を利用している下着メーカー
以前、タオルメーカーの社長と話した際、オーガニックコットンと通常のコットンについて教えてもらいました。
オーガニックコットンも通常のコットンも素材としては、まったく同じ。
「通常のコットンに農薬が使われていても素材の段階では、農薬は検出されない」とのことでした。
このことからも、オーガニックコットンに肌にやさしい特別な効果はないといえます。
ちなみに、化粧品成分でも同様です。
オーガニック成分にも肌にやさしい効果はありません。
5.みんなが経皮毒を信じてしまった理由
経皮毒は、何のエビデンスもないのに、多くの人が信じてしまいました。
そこには、知ってか知らずか、巧妙な罠がいくつもありました。
5-1.経皮毒というネーミングが巧妙
「経皮毒」というネーミングは造語です。
学術用語ではありません。
何の意味も役割も持たない言葉です。
でも、似た言葉に「経皮毒性」という学術用語があります。
これは、皮膚に適合した試験という意味で用いられます。
「経皮毒」と「経皮毒性」
すごく似てますね。
おかげで「経皮毒」がまるで学術用語のように認識されました。
学術用語だと勘違いされたおかげで、権威を得ることができました。
5-2.医師が経皮毒を信じる痛恨のミス
2006年当時、非常に残念なことですが、経皮毒を信じる医師が出てきました。
これこそが一般の人に経皮毒が広まってしまった一番の理由です。
日本人は「権威」に弱い民族です。
医師や大学教授をはじめ、テレビに出ている有名人、ニュースなどを簡単に信じます。
という私も化粧品業界に入ったころは経皮毒を信じていました。
昔は、健康情報といえばテレビや医師ぐらいからしか聞けませんでした。
その名残りなんですかね。
私は、仕事柄、化粧品を開発してるので、スキンケア周りの知識に関しては、研究論文や化粧品研究者から情報を集めますが、専門外のことはそれほど調べません。
専門家の意見を信じる傾向にあります。
でも、医師って意外と専門外のことは知らないんですよね。
現在、私は月に1回、医師に会って情報交換をしています。
その際に、化粧品についても意見を聞かれることがあるのですが、驚くほど知識がありません。
先日も、化粧品に含まれる鉱物油や合成界面活性剤、防腐剤(パラベン)は肌に悪いというアリがちな誤解を解くのに苦労しました。
医師は、あくまで医療と薬学に詳しいのです。
化粧品に関する知識は皆無です。
洗剤については、さらに知らないでしょうね。
だから、経皮毒のウソを見抜けない医師がいても当然といえば当然です。
ただ、医師は権威があるので、間違った情報を発信すると被害にあう人が増えるので困ります。
あなたも化粧品のサイトで白衣を着た医師を見たことがあると思います。
でも、医師が推薦しているようなイメージを抱きます。
5-3.経皮毒と炎症、アレルギー反応をすり替え
経皮毒は、炎症やアレルギー反応をあたかも「体内に毒が蓄積されたために生じる症状だ」とすり替えることに成功しました。
例えば、「洗剤で手を洗って手がボロボロになるのは、経皮毒のせいだ」といった具合に。
経皮毒を説明するときに、毒性がある成分として紹介されるラウリル硫酸ナトリウム。
確かに、肌に刺激を与えて、肌荒れを引き起こす可能性があります。
でも、これはラウリル硫酸ナトリウムの強い効果によって、肌が炎症を起こしているだけです。
経皮毒による害ではありません。
また、アレルギー反応も同様です。
体質によって、特定の成分で肌荒れを引き起こします。
これも経皮毒による害ではありません。
その証拠に、どちらも刺激となる行為を止めれば症状は治まります。
もし、毒なら刺激となる行為をやめても症状は治まりません。
このように、炎症やアレルギー反応は、毒ではありません。
でも、経皮毒は、炎症やアレルギー反応を毒とすり替えることで、多くの人から共感を得て広まりました。
非常に巧妙な方法です。
5-4.「ほぼ安全」をミスリードして経皮毒の信ぴょう性をアップ
安全性を証明する実験では、「絶対に安全」と言い切ることができません。
なぜなら、この世の中に「絶対安全」と断定できる物質は存在しないからです。
例えば、体に良い食べ物でも、それだけを食べていれば、いずれ体に毒となります。
少量なら薬効があるものでも、量が増えると毒となります。
そのため、学術的な表現では「ほぼ安全」と表現します。
「ほぼ安全」という表現は、「事実上安全」を意味します。
でも、経皮毒は、この「ほぼ」を使って、うまくミスリードすることに成功しました。
「ほぼ安全である」を「完全には安全でない」と間違った解釈を広めました。
その結果、いつのまにか「ほぼ安全」は「〇〇は危険物だ」と逆の意味だと信じる人が増えました。
そこに、「以前から発ガン性の危険性が指摘されています」といった恐怖心への煽りが加わると一気に信ぴょう性が増します。
また、メディア報道でも、信頼性の高いエビデンスを取りあげることは少なく、その一方で、たとえば「脳が破壊される」といったセンセーショナルで視聴率が取れる情報を、科学的に検証されてなくても取りあげるといった傾向があります。
これも経皮毒のように間違った情報が消費者へ伝わる一因です。
5-5.化粧品の宣伝が経皮吸収を拡大解釈
「経皮吸収」と聞くと、肌から小さな分子量の成分がどんどん体内に吸収されるように感じるかもしれません。
でも、これは経皮吸収を解釈した考え方です。
実際は、簡単にいろんな成分が体内に侵入するわけではありません。
経皮吸収を拡大解釈する一因は、化粧品業界にもあります。
- 肌の奥深くまで浸透
- 肌にグングン吸い込まれる
- 肌の深部まで届く
など、あたかも化粧品成分が肌の深い部分まで届くような誤解を生む表現が多用されています。
化粧品の広告は、角質層までの表現しか認められていません。
誤解を生みそうな表現の近くには、「※肌の角質層(角層)まで」という但し書きが表記されていますが、あまり目に留まらないでしょう。
その結果、経皮吸収が起こりやすいように錯覚してしまうのもムリはありません。
また、経皮吸収の拡大解釈を利用して、経皮毒のように、特定の成分(防腐剤(パラベン)、香料、着色料)を悪者にする広告も目にします。
そのため、正しい情報が伝わりにくい環境下にあります。
だから、これだけ覚えておいてください。
化粧品の効果は、たった0.02mmしかない角質層までです。
そのため効果はゆるやかで、劇的な美肌効果は期待できません。
反面、化粧品は安全性が高いのです。
以上の理由から、化粧品が経皮毒を引き起こすことはありません。
以前、医薬品メーカーで働く湿布薬の研究者と話した際に、経皮吸収について聞きました。
すると、「そんな簡単に経皮吸収できる方法があったら教えてほしい。自分たちが薬効を患部に効率よく届けるために、どれだけ研究開発で苦労しているか…」と嘆いていました。
効果の高い医薬品でも、経皮吸収させるのは大変なようです。
このことからも化粧品成分が容易に経皮吸収されないことがわかります。
まとめ
経皮毒はウソです。
だから、洗剤やシャンプー、ナプキン、おむつなどを選ぶ際、経皮毒を気にする必要は一切ありません。
合成界面活性剤配合の有無は、健康に何の関係もありません。
むしろ、経皮毒というウソ情報のために、あなたの選択肢が狭くなることこそ、大きなデメリットです。
逆に、間違った情報に踊らされることなく、選択肢を広くもつことは、あなたにとって大きなメリットになります。
あなたにとって、必要な効果があり、使いやすく継続性の高いものを優先して選んでください。