2018年01月22日
オーガニックコスメ・ヘアケア商品で有名な『ジョンマスターオーガニック』が、表示成分を誤表記していたことが9月21日に発覚し、自主回収を行いました。
要は、
という話です。
これを読んだ9月21日の段階では、「へーそんなミスあるんだな~」と思ったぐらいでした。
ですから、Yahoo!ニュースで続報が出たのを見た私は、「ヘアケア商品の誤表記ぐらいでトップニュースに出るなんて、日本は平和だな~」と軽く考えていたのですが、不備だとされる中身が公表されてびっくりです。
これって、誤表記で済むレベルじゃないでしょう??
結構な大事件だったのです。
誤表記どころではないその不備内容とは
今回の事件を簡単に説明すると、
などなど。
つまり、ジョンマスターオーガニックは、普通のシャンプーを、『天然由来成分100%』や『オーガニック植物成分を配合』、『ノンシリコンヘアケア商品』などと謳って、オーガニック商品を装っていたということです。
しかも、その数121万個!
38種類!
日本国内取扱商品の4割!
扱い商品の4割を間違った情報で販売していたというのです。
ジョンマスターオーガニックのシャンプーは、1本あたり3,000円程度なので、ざっくりですが、合計すると36億3000万円ということになります。すごい売上金額ですね。
さて、被害にあった方は、裏切られた気持ちでしょうから本当に気の毒です。
こういう信頼を裏切られる行為って、気落ちしますよね。
せっかくの機会ですから、悪い意味で良い事例なので、この事件からしっかりと学びましょう!
ヘアケアや化粧品成分は、こんなウソがつける?
結論を言うと、「可能」です。
一般的に化粧品やシャンプーなどのトイレタリー用品の多くは、情報が外部に漏れません。その理由は、主に秘匿義務やその専門性の高さによるものです。
だから、ウソをついてもバレにくい業界です。
また、ウソをチェックする機関がありません。
全成分表示義務という「配合されている成分は全部書きましょう」という決まりはありますが、表示されているそれが本当かどうかを調べる仕組みはありません。
だから、極端な話にはなりますが、ウソはつき放題です。
このことから、化粧品の表記や宣伝文句には、ウソが含まれる可能性が多分にあることが分かります。
ウソをついている会社は、いっぱいあるの?
ここは、正直どれだけの数があるかは分かりません。
ですが、ジョンマスターオーガニック以外にもあることは確実だと思います。
今回のように分かりやすいウソは当然ながら、合法的なウソをついているところは山ほどあります。
例えば、『着色料無添加化粧品』。
この場合、着色料を配合していない化粧品ということになります。
消費者の立場からすれば、着色目的の成分を配合していないという理解が一般的です。
でも、名目は保湿成分で、着色料として使える成分があります。 こういった成分を使って着色します。
つまり、着色はしているけど、着色成分は使っていないということです。
ややこしいですね。
化粧品の広告文句にしても、「肌の奥深くまで浸透」と言いながら、片隅に小さな文字で「※角質まで浸透」とか書いてあるのをよく目にします。
角質に浸透するのは、化粧品ではごく普通のことです。
これらも厳密言えば、消費者をあざむいていると思うのですが、どうなんでしょうね?
こうしたことから、厳密に言うと『ウソ』の範疇に含まれるであろう売り文句を使う会社はあります。
ウソを見破ることってできるの?
すべてのウソを見破るのは無理ですが、『知識』と『経験』があればある程度可能です。
例えば、私は職業柄、自分の体を使っていろんな化粧品を実験しています。
だから、実際に使ってみると、どれぐらい刺激のある成分が使われているのかが実感として分かります。
また、研究者レベルなら、表示を見ただけで、ある程度の効果や使用感を想像できます。 すごい人は、製造方法や成分の配合率まで見抜きます。
まぁ、こんな人は稀ですが。
今回のオーガニックヘアケア商品にシリコンが使われていたというのも、分かりやすい例だと思います。
シリコンを使っているかどうかは、指どおりの良さでおおよそ分かります。
ノンシリコンは、どうしても使用感がキシキシしてしまいがちです。
「美容師の方は気づいていた」という話もあるようですが、ジョンマスターオーガニックの口コミを見ると、多くの人は気づいていなかったようです。
もし、この口コミが本当なら、『オーガニック』や『ノンシリコン』が意味のないものだと立証されたことになります。
こうしたことから、仕事で日常的に携わっている人なら商品のウソを見抜けるが、一般の人は難しいことだと分かります。
じゃあ、商品のウソを見抜くことは無理なの?
「どんなウソも100%見抜く」のは無理だと思います。
ただ、ある程度は分かります。
これは、化粧品だけでなくすべてに言えることなのですが、『どこまで本質をついているか?』を注意深く観察すれば、あれ程度の判別ができます。
例えば、今回のオーガニックヘアケア・コスメ商品。
シャンプーや化粧品において、本当に『オーガニック』という要素が必要なんでしょうか?
ここについては、いろんな考えがあるので一概に言えませんが、私は、ある一定の『天然成分第一主義』をターゲットにした販売手法に過ぎないと考えています。
スキンケアの本質には何ら関係がないからです。
ノンシリコンについても同じです。
シリコンを入れないほうが髪や頭皮にいい理由なんて一つもありません。
それよりも、髪がきしむこと、それにより頭皮にダメージを与えるデメリットのほうが大きいと考えます。(私が『やさしいシャンプー』をノンシリコンにしたのは、きちんとした理由があります。その話はまた別の機会に。)
その証拠に、今回の誤表示に関する発表でも、ジョンマスターオーガニックは、『健康被害はない』と断言しています。
これは、オーガニックであろうがなかろうが、ノンシリコンであろうがなかろうが、どっちでも同じだよと認めているのと同義です。
このように、「その商品の本質・本当の目的に即したものかどうか」で、ある程度判断できると思います。
今回はミス?意図的?
誤表記以外の情報がまだ公式には出ていないので明言はできません。(10月24日現在)
でも、完全な想像ですが意図的なものを感じますし、そう思っている方は多いんじゃないでしょうか。
というのもミスの範疇なら、せいぜい成分名が抜けていたとか、成分名を間違えていた程度で、その数も一つ二つ程度でしょう。
ましてや、配合していない成分を表記することなんてありえないのです。
さらに、それが複数の商品、取扱商品の4割までに達することは、そこに人の意図が介在していたことは明らかです。
問題は、「誰がウソをついていたか?」です。
一つずつ見てみましょう。
ヘアケア・化粧品の製造には、大きくは『製造会社』と『メーカー』の2社が関わっています。今回のジョンマスターオーガニックは、後者の『メーカー』です。
『製造会社』側がウソをついていた場合。
『メーカー』に内緒で中身を安価な原料に変えて、利益を確保するため、などの理由が考えられます。
この業界も二極化が進んでおり、「うちは品質重視で安い価格では作らん!」という会社と「うちは小ロット、低価格で作れます」という会社に分かれています。
ほとんどは、後者です。
すると、とにかく安く作る必要があります。
今回のように、約1年で、38種類、121万個というと、かなりの大型受注です。
製造会社としては、自社の売り上げの多くを占めているだろうし、絶対に逃したくありません。
だから、たとえメーカーが無理難題を言ってきても、それに応えようとするでしょう。
また、規模が大きい分、安価な原料を使った際に利益が残りやすい状況とも言えます。
製造会社にウソをつかれると、メーカーはそのウソにはなかなか気づけないでしょうね。
次に、『メーカー』側の場合。
最近は、オーガニックコスメやノンシリコンヘアケア商品なんて、珍しくも何ともありません。
言い換えれば、競争が激化して、以前より売りにくくなっています。
だから、単純に、安価な原料を使うことで製造原価を下げて、利益を確保、大量の広告・宣伝費のねん出などを目的に行われたかもしれません。
ただ、この場合、通常は製造会社がチェックするため、誤表記に気づく可能性が高いです。
やるとすれば、どこかから製品を仕入れて、自社で誤表記されたボトルに充填しなおせば可能なのですが、そこまで手間暇かければ、本来の目的である利益を損ないます。
シール対応なら貼り替えるだけ、と簡単なのですが、高級ヘアケア商品にシールは似合いません。
つまり、メーカー単体では難しいということです。
こう考えると、『製造会社単体で行った』か、『製造会社とメーカーがぐるで行ったか』の二択に絞られます。
今後、もし、ジョンマスターオーガニックが製造会社を訴えれば前者だし、何もしなければ後者だということになるので、時間の経過とともに明らかになるでしょう。
今回の件をまとめると、
ということです。
ジョンマスターオーガニック側も、「オーガニックも、ノンシリコンも、結果どっちでも同じ」と分かっているなら、商品コンセプトを変えたらいいのに、と思うのですが、そうもいかないしがらみでもあるのでしょうか・・・?
ちなみに、今回の情報の出どころはどこなんでしょうね。
これまた想像ですが、内部告発か、同業者の調査による結果のどちらかである可能性が高いですね。
どちらにせよ、今の時代、悪事は確実にバレます。
だからというわけではないのですが、正直に生きたいものです。
※このコラムは手作り新聞112号に掲載されたものと同じ内容です。
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