乾燥肌に大人気の美容成分『セラミド』。
セラミド化粧水・セラミドクリーム・セラミド美容液など、多くの化粧品に配合されています。
セラミドには、「ヒト型セラミド」と「天然セラミド」の2種類があります。
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天然セラミドは、「天然」といっても、植物体や微生物からセラミド類を抽出する際に、有機溶媒を使用しています。
簡単に言えば、抽出する際に合成成分を使っています。
天然100%成分ではなく、抽出元が天然物という意味です。
化粧品の全成分表示に「セラミド」と表記できるのは、「ヒト型セラミド」だけです。
そのため、化粧品成分におけるセラミドとは、「ヒト型セラミド」です。
現在、ヒト型セラミドには2つの種類があります。
- 従来のヒト型セラミド
- 従来のヒト型セラミドをナノ化したヒト型ナノセラミド
この記事では、この2つのヒト型セラミドの効果を検証していきます。
1.美肌効果のあるヒト型セラミド
セラミドには、美肌効果のあるものと美肌効果のないものがあります。
セラミド化粧品を使うなら、美肌効果のないセラミドは避けて、美肌効果の期待できるセラミドを使いたいものです。
そこで、5つのセラミドの実験結果から、「美肌効果のないセラミド」と「美肌効果のあるセラミド」、さらに美肌効果が期待できるセラミド配合量を検証しました。
美肌効果が期待できないセラミド
- ヒト型セラミド以外のセラミド全般
- 分子量が100~300ナノメートルサイズのセラミド
- 油剤や乳化剤にしか解けないため低濃度でしか配合できない従来のヒト型セラミド
- 油剤にすら溶けにくく、ヒト型セラミド以上に低濃度でしか配合できない従来のヒト型アシルセラミド
- ヒト型セラミドと非ヒト型セラミドが配合されているセラミド化粧品
高い美肌効果が期待できるセラミド
- 20ナノメートルサイズにナノ化されたヒト型セラミド
- 20ナノメートルサイズにナノ化されたヒト型アシルセラミド
- ヒト型セラミドのみ配合されたセラミド化粧品
- もっとも高い美肌効果が期待される
理想的なセラミドとその配合量
- ヒト型ナノセラミド1%+ヒト型ナノアシルセラミド0.1%を配合したセラミド化粧品
これらの条件を満たしているセラミド化粧品を選びましょう。
2.ヒト型ナノセラミドの研究で実証されたセラミドの美肌効果
セラミドには、いくつかの実験結果があります。
その中でも、富士フィルムがリリースしているエビデンスからセラミドの効果を検証したいと思います。
「ヒト型セラミド」と「ヒト型ナノセラミド」について書かれているので、非常に参考になります。
2-1.「ヒト型ナノセラミド開発技術リリース」からセラミドの効果を検証
2010年に富士フィルムから「ヒト型ナノセラミド」の開発技術についてリリースされました。
参考:2010年富士フィルム「肌への浸透性とバリア機能の回復力を高める 「 ヒト型ナノセラミド」を開発」
内容を簡単にまとめると・・・
- セラミドにもいろいろあるけど、ヒト型セラミドが細胞間脂質のセラミドと親和性が高いため他のセラミドに比べて高い効果が期待できる。
- ヒト型セラミドは、溶液中で結晶化しやすいために、大量の油剤(オイル)や乳化剤(界面活性剤)が必要となるため高濃度で配合することができない。
- ヒト型セラミドは、オイルの溶媒中に低濃度でしか配合できず、分子量も100~300ナノメートルサイズなので角層への浸透力が弱く効果が期待できない。
- ヒト型ナノセラミドは、従来のセラミドようにオイルや乳化剤を用いる必要がないので、高濃度配合が可能となり、20ナノメートルサイズまで小さくすることに成功。
- ヒト型ナノセラミドと従来のヒト型ナノセラミドを比較すると浸透率とその効果に圧倒的な差が出る。(図1、2を参照)
- ヒト型セラミドと他のセラミドを混ぜてしまうと、セラミド効果そのものが著しく低下する。(図3を参照)
この中で注目すべきは、従来のヒト型セラミドの効果の低さです。
図1の浸透率を見ると、従来のヒト型セラミドは、ヒト型ナノセラミドと比べて、それほど肌の中に浸透していないのがわかります。
そのため、図2でわかるように、ヒト型セラミドの場合、バリア機能があまり回復していません。
この実験結果からわかることは、以下の通りです。
- ヒト型セラミド以外(天然セラミド)は、細胞間脂質のセラミドと親和性が低いために高い美肌効果は期待できない。
- ヒト型セラミドであっても、高い美肌効果は期待できない。
- ヒト型セラミドと他のセラミドを混ぜてしまうと、著しく効果が下がる。
- ヒト型ナノセラミドは、浸透力も高く美肌効果が期待できる。
2-1-1.ヒト型ナノセラミド効果検証
今回の実験は、「ヒト型セラミド」と「ヒト型ナノセラミド」との比較実験です。
もちろん、それなりの意義はあるのですが、できれば他の成分との比較をしてほしいです。
例えば、リリース内のヒト型セラミドを説明する際、以下のように書かれています。
「擬似セラミド」「糖セラミド」など数あるセラミド類の中で、「ヒト型セラミド」は肌への親和性が最も高く、肌の細胞間脂質のラメラ構造形成に有用とされています。さらに「ヒト型セラミド」のみを用いると規則正しく配列することが期待できますが、異なる異性体(非ヒト型セラミド)と混合して用いると規則正しく配列することが期待できません。
ヒト型セラミドがその他のセラミド(疑似セラミド、糖セラミド)より有用なら、これらのセラミドとも比較してほしかったです。
異なる異性体(非ヒト型セラミド)と混合して用いる場合も同様です。
他のよく似た効果のある成分との比較をすることで、ヒト型ナノセラミドの結果が突出していれば、さらに優位性を主張することができます。
そういった意味で、従来のヒト型セラミドだけとの比較実験だけでは、不十分だと思います。
2-2.「肌の保湿成分『ヒト型セラミド』の新機能を発見」から、セラミドの効果を検証
2014年には富士フィルムから「ヒト型ナノセラミド」の効果について、続編がリリースされました。
参考:富士フィルム「肌の保湿成分「ヒト型セラミド」の新機能を発見。肌のバリア機能(*1)を担う、角層細胞外壁のタンパク質産生を促進」
ここで新たにわかったことを簡単にまとめると・・・
- ヒト型セラミドが、角層細胞の外壁を形成するタンパク質の産出を促進する効果があることを発見。
- ヒト型セラミドが、肌内部でセラミド生成において重要な役割を果たすセラミド合成酵素の産出を促進する効果があることを発見。
- 従来のヒト型セラミドとヒト型ナノセラミドを比較実験すると、セラミドの効果に影響をもたらすタンパク質「INV」、「TGase」ともに、ヒト型ナノセラミドの方が両タンパク質の産出促進効果があった。(図2、3、4を参照)
- 従来のヒト型セラミドとヒト型ナノセラミドを比較実験すると、ヒト型ナノセラミドの方がSPT産出促進効果があった。(図5を参照)
前回のリリースより、ヒト型セラミドの美肌効果が具体的になりました。
セラミドによる角層細胞の外壁を作るタンパク質とセラミド合成酵素の生成を促進する効果について書かれています。
「INV」、「TGase」の比較実験には、皮膚モデルを使っています。
皮膚モデルの場合、浸透力が重要になります。
肌への浸透力は、基本的に分子量の小さいほうが有利になります。
そのため、従来のヒト型セラミドより分子量の小さいヒト型ナノセラミドの方が肌に浸透しやすく、有利な結果が出たと思います。
でも、SPTの比較実験では、表皮細胞を使っています。
表皮細胞の実験では、肌に浸透させる必要がありません。
この場合、従来のヒト型セラミドが持つ”分子量の大きいために浸透力が弱い”というデメリットがかなり軽減されるはずですが、ヒト型ナノセラミドと大きな差が出ています。
この結果から、肌への浸透力以外にも、従来のヒト型セラミドの効果が低い理由があるのかもしれません。
この実験から新たにわかることは・・・
- ヒト型ナノセラミドが効果的に角質細胞の外壁を強くすることが期待できる。
- ヒト型ナノセラミドが効果的にセラミドの産出量を増やすことが期待できる。
- 従来のヒト型セラミドに比べて、ヒト型ナノセラミドが持つ「INV」、「TGase」、「SPT」の産出促進効果が圧倒的に高い。
- 従来のヒト型セラミド浸透力の低さ以外にダメな要素がほかにあるかも。
2-2-1.ヒト型ナノセラミド効果検証①
水「INV」「Tgase」「SPT」の産出促進効果の実験は、ヒト型セラミド、ヒト型ナノセラミドで比較されています。
水が基準となっていますが、そもそも水に「INV」「Tgase」「SPT」の産出促進効果はありません。
つまり、水というのは、何もしていない状態と同じです。
私たちの皮膚は、何もしなくても「INV」「TGase」「SPT」を産出しています。
そして、それはすごく微量です。
その微量なものに対して、ヒト型アシルセラミドの場合、INVで1.2倍、TGaseで2.3倍、SPTで1.7倍といわれても、その数値が高いのか、低いのかが判断できません。
水の場合の産出量が厳密にわからないのですが、誤差の範囲だと思います。
水に対してこの程度の倍率では、ヒト型セラミドの優位性を証明しているようには思えません。
2-2-2.ヒト型ナノセラミド効果検証②
今回の実験では、セラミドが細胞間脂質に入ることで、細胞間脂質に含まれる成分が増える結果がでています。
化粧品原料とは思えない、どちらかと言えば医薬品に近い効果です。
でも、医薬品並みの強い効果があるということは、少なからず副作用というリスクをはらんでいる可能性があります。
そのため以下の懸念があります。
- 本当に、安全に、私たちにとって都合のいい成分だけを増やすのでしょうか?
- その裏で私たちに不都合なことは起きないのでしょうか?
セラミドの医薬品に匹敵する効果の検証は、すべて培養表皮モデルが使われています。
美容表皮モデルとは、人工的に皮膚に近い状態を作ったものです。
これを用いることは、特に珍しいことではありません。
培養表皮モデルができるまでは、動物実験が主流でした。
本当に価値がある実験ならまだしも、自社の優位性だけを目指して、無駄に命を奪われた動物がたくさんいました。
今では、そのような悲劇がゼロになった訳ではありませんが、かなり少なくなっています。
また、実験に特化したものなので、実験そのものが容易で実験対象の効果がわかりやすくなっています。
そういった意味では、すばらしい発明と言えるでしょう。
国立医薬品食品衛生研究所の小島肇氏の「三次元モデルの培養と可能性」の29ページを見てもらうとイメージしやすいと思います。
本当に素晴らしい培養表皮モデルなのですが、デメリットもあります。
さきほど、ご紹介した「三次元モデルの培養と可能性」の32ページ「現在の代替法の特徴」を見てください。
簡単に言うと、「培養表皮モデルは、有害性や正確性はわかるものの、リスク評価ができず、安全性が担保できない」とあります。
つまり、「効果はわかりやすいけど、危険性はわからないよ」ということです。
ナノ化されたセラミド、アシルセラミドの効果が出やすい反面、危険性まではわからないのです。
もし、高い効果を発揮するなら、安全性に関する実験もして欲しいところです。
2-2-3.ヒト型ナノセラミド効果検証③
「INV」は、角層細胞の外壁を構成するタンパク質のひとつです。
「TGase」は、「INV」などの多層細胞の外壁を構成するタンパク質同士を結合する酵素の一つです。
「2つの量が増えると強固な構造の角化細胞の外壁が期待できる」と書かれています。
説明では、2つの成分は、あくまでも角層細胞の外壁とそれを結合するのに効果的とされています。
セラミドが含まれる細胞間脂質との関係については説明がありません。
また、角質細胞の外壁を構成するタンパク質や酵素は、INVやTGaseの他にもあります。
INVとTGaseが増えるだけで、角化細胞の外壁が本当に強固になるのかは不明です。
他のタンパク質や酵素も同様に増える必要があると思います。
説明では、あくまで「期待できる」という程度なので、これからの研究に期待したいところです。
2-2-4.ヒト型ナノセラミド効果検証④
「SPT」は、セラミドの生成反応を促進する酵素です。
これは、セラミドそのものの量が増えるので細胞間脂質にも関わります。
説明の最後には、「SPTが増えることでセラミドの生合成が促されることが期待できます」と書かれています。
セラミドの整合性が促されることで、細胞間脂質のセラミドが増えるのか疑問です。
なぜなら、セラミドは生まれてから細胞間脂質に至るまで変質するからです。
セラミドが生まれて、細胞間脂質になるまでの流れを見てみましょう。
セラミドは、表皮の有棘層や顆粒層で生成されます。
その後、一旦グルコシルセラミド、スフィンゴミエリンの形で表皮細胞膜リン脂質などとして蓄えられます。
そして、細胞外へと排出されて、βグルコセレブロシダーゼとスフィンゴミエリナーゼの作用を受けて、再びセラミドとなり、細胞間脂質で機能を果たします。
このように、セラミドは生まれてから一度違う成分に変質して蓄えられて、さらにセラミドになります。
となると、セラミドが増えると、変質したセラミドを蓄える力。
その後、セラミドに変えるβグルコセレブロシダーゼとスフィンゴミエリナーゼの量も増える必要があります。
この2つの要素を無視して、セラミド単体の産出量だけ増やして、本当に効果があるのか疑問です。
今回のヒト型ナノセラミドの実験結果からわかるのは、この3つの成分が増えるかどうかは 「期待できる」程度で、保湿効果やバリア機能への関係については不明です。
2-3.「『ヒト型アシルセラミド』を世界最小20nmサイズで安定分散することに成功」からセラミド効果を検証します
2015年の「ヒト型アシルセラミド」についてのリリースです。
参考:富士フィルム「ヒト型アシルセラミド」を世界最小(*1)20nmサイズで安定分散することに成功。角層への浸透性を従来比約6倍に向上させた「ヒト型ナノアシルセラミド」を開発」
肌のバリア機能を担う角層細胞間脂質の層状構造を修復。」
ここで新たにわかったことをまとめると・・・
- 細胞間脂質には、短周期ラメラと長周期ラメラがあり、長周期ラメラの形成に深く寄与するヒト型アシルセラミドはヒト型セラミドにも増して溶解性が低く、水にも油にも溶けないため扱いが困難だったが、20ナノメートルサイズのナノ化に成功することでこの問題をクリア。(図2を参照)
- 従来のヒト型アシルセラミドに比べて、ヒト型ナノ化アシルセラミドの浸透性は6倍。(図3を参照)
- ヒト型アシルセラミドがダメージ肌モデルの回復を確認。(図4を参照)
- ヒト型ナノセラミド単体より、ヒト型アシルセラミドと一緒に使用したほうがバリア機能への効果は高い。(図5)
ラメラ構造には、「短周期ラメラ」と「長周期ラメラ」の2種類があります。
この2種類のラメラに働きかけることでバリア機能が高まるとされています。
ヒト型セラミドは、短周期ラメラに効果はあるのですが、長周期ラメラには作用しません。
そこで、長周期ラメラに効果のあるヒト型アシルセラミドの出番というわけです。
でも、このヒト型アシルセラミドが非常に厄介です。
ヒト型セラミドも溶けにくくて厄介なのですが、油の成分には溶けます。
ちなみに、水溶性の成分には溶けません。
一方、ヒト型アシルセラミドは、油の成分にすら溶けにくいのです。
溶けにくいということは、低濃度でしか配合できず、美肌効果が期待できません。
また、安定性も悪くなり、変質するリスクが増えます。
だから、ヒト型アシルセラミドは化粧品にもあまり使われていませんでした。
ところが、ヒト型アシルセラミドは、ナノ化することでそのデメリットを払拭したようです。
ヒト型ナノアシルセラミドを化粧品に配合できるようになったことで、短周期ラメラと長周期ラメラ、双方にセラミドの効果が発揮されるということです。
確かに、いくらセラミドに効果があると言っても、どちらか一方だけのラメラしか効果がないなら片手落ちです。
それにしても、従来のヒト型アシルセラミドは効果が低いです。
化粧品に配合するのが難しい成分を苦労して配合しても、こんなに効果が低いと報われませんね。
この実験からわかることは、
- 従来のヒト型アシルセラミドより、ヒト型ナノアシルセラミドの方が美肌効果を期待できる。
- いくら短周期ラメラに効果的なヒト型ナノセラミドでも、それだけでは不十分。
- 長周期ラメラに効果のあるヒト型ナノアシルセラミドも併用して使わなければ意味がない。
- 従来のヒト型アシルセラミドは、イマイチだった。
ということです。
3.ヒト型セラミドの実験で実証された美肌効果
「セラミド化粧品」で、おそらく最も有名であるヒフミドシリーズを販売している小林製薬がリリースした研究結果を元に、セラミドの効果を検証していきたいと思います。
基本的に、セラミドの中でもヒト型セラミドが最も効果があるというスタンスです。
実験内容も、ヒト型セラミドの効果について行われています。
3-1.「『ヒト型セラミド1,2,3』の肌への有効性を新発見」からヒト型セラミドの効果を検証
2016年8月にリリースされた小林製薬の「『ヒト型セラミド1,2,3』の肌への有効性を新発見」を見てみましょう。
このセラミド効果の実験結果を簡単にまとめると・・・
- 『ヒト型セラミド1,2,3』は、ELOVL1, ELOVL3, CERS3, CERS4, PPAR-α, βGCaseの遺伝子発現を高める(図2)
- 『ヒト型セラミド1,2,3』は、ELOVL6, CERS2, SPT, SMaseの遺伝子発現には影響しない(図3)
- 『ヒト型セラミド1,2,3』は、セラミド1, 2, 4を増加させる(図4)
この実験で言いたいことは、
- ヒト型セラミド単体より、『ヒト型セラミド1,2,3』を配合した混合物の方がセラミドの生合成に関わっている成分が増加するよ。
- その結果、『ヒト型セラミド1,2,3』は、セラミド1, 2, 4を増加させるよ。
- つまり、「ヒト型セラミド配合化粧品を使うなら、『ヒト型セラミド1,2,3』が混合されているものを使おうね」です。
では、さっそく私の主観的な視点ではありますが、検証していきます。
3-1-1.ヒト型セラミド効果検証①
まず、『ヒト型セラミド1,2,3』の優位性を示す図2を見て行きましょう。
画像引用元:小林製薬ニュースリリース「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見 セラミド産生促進効果を確認
「『ヒト型セラミド1,2,3』によって、セラミドの生合成に関する遺伝子の発現が高まる」という根拠が示されています。
何も添加していない状態と『ヒト型セラミド1,2,3』を25μg/mlと50μg/mlを添加したグラフです。
それぞれの最も高まった遺伝子の発現量を見ると・・・
ELOVL1:1.5倍
ELOVL3:2.5倍
CERS3:2倍
CERS4:2.5倍
PPAR-α:1.2倍
βGCase:3倍
と書かれています。
これだけみると「3倍も増加するなんてすごいな~」と思うのですが、実際は、そうではありません。
この実験は、三次元培養皮膚モデルを使用して人工的に構成された条件下で行われています。
これは、各種の実験条件が人為的にコントロールされた環境であることを意味しており、非常に効果の出やすい実験手法です。
たまに、テレビで試験管の中で実験している様子が映りますよね、あんなイメージです。
だから、私たちが現実にセラミド化粧品として皮膚に使う場合は、効果が格段に落ちることもあり得ます。
効果の落ちる割合は個人差なので一概には言えないのですが、この程度の倍率ならセラミド化粧品の効果は、「ほとんど期待できないのでは」と疑問に思います。
ぜひ、化粧品に添加した状態で倍率を出してほしいものです。
また、この実験は、遺伝子の発現量を計測しているのですが、この手法そのものが『言い過ぎ』を誘発しやすいと言われています。
私の100倍ほど詳しい方が過去の事例などを交えて説明されているので、興味のある人は読んでみてください。
参照:京都大学 大羽 成征氏「遺伝子発現データに基づく予測と推定:言いたいことと言えること」
このことから、セラミド関連の遺伝子発現量の倍率の低さと『言い過ぎ』が起きやすい実験方法が気になるところです。
3-1-2.ヒト型セラミド効果検証②
次に、比較対象の問題です。
もし、セラミド関連の遺伝子発現量の増加を主張するなら、他のヒト型セラミドの組み合わせと比較するべきではないでしょうか?
今回の実験は、『ヒト型セラミド1,2,3』の混合物なのですが、ヒト型セラミド1,2,4混合物とか、ヒト型セラミド2,3,4とかと比較して欲しいところです。
他のさまざまなヒト型セラミドとの組み合わせと比較して、 『ヒト型セラミド1,2,3』が一番効果あってこその主張だと思います。
単に、 『ヒト型セラミド1,2,3』混合物単体の濃度比較だと、特に優位性を感じません。
3-1-3.ヒト型セラミド効果検証③
画像引用元:小林製薬ニュースリリース「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見 セラミド産生促進効果を確認より
次に、 『ヒト型セラミド1,2,3』による『ELOVL6, CERS2, SPT, SMase』の遺伝子発現量の効果がなかったとされる図3を見てみましょう。
『ELOVL6, CERS2, SPT, SMaseの遺伝子発現には影響を与えないことを確認した』とのことですが、グラフを見ると影響与えているように見えます。
ELOVL6、SMaseは、『ヒト型セラミド1,2,3』を25μg/ml添加すると遺伝子発現量が落ちています。
SPTは、『ヒト型セラミド1,2,3』を50μg/ml添加する遺伝子発現量が落ちます。
CERS2は、きれいに右上がりなのに、『発現しないチーム』に入っているのかよく分かりません。
ともかく、ELOVL6, SPT, SMaseの図を見てみると、配合量によって落ちたり増えたりして一貫性がありません。
本当に、『ヒト型セラミド1,2,3』が遺伝子発現量に関係しているなら、良くも悪くも右上がり、左上がりと一貫性があるように思います。
この動きを見ていると、『ヒト型セラミド1,2,3』による遺伝子発現量の優位性を示す図2のデータがたまたま右上がりになったデータを使っているように感じます。
仮に、図2に示される『ヒト型セラミド1,2,3』による遺伝子発現量の優位性が正しかったとして、ELOVL6, SPT, SMaseは減少しても問題ないのでしょうか?
これらの成分もセラミドの生合成に深くかかわっています。
セラミドの生合成は、複数の成分が関係しています。
ということは、減少する成分があるということで、全体のバランスを崩して、むしろセラミドの生合成が減少するのではと推察します。
本来は、セラミドの生合成に関わる成分全ての遺伝子発現量が確認できてこそ、セラミドの生合成の増加に期待できるのではないかと思います。
3-1-4.セラミド効果検証④
画像引用元:小林製薬ニュースリリース「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見 セラミド産生促進効果を確認より
次に、セラミド1,2,4の増加を示した図4を見てみましょう。
個別にみると、
セラミド1:約1.3倍
セラミド2B:約1.4倍
セラミド4:約1.3倍
いずれも大した倍率じゃないですね。
図2と同じように、セラミド5も微量ですが右上がりなので増えているのですが、スルーされています。
セラミド2Aは、 『ヒト型セラミド1,2,3』を25μg/ml添加すると減少して、50μg/ml添加すると増える奇妙な現象が起きています。
これを見ると、先ほどと同じように、偶然に右上がりとなったデータに着目しているにすぎないのではと疑念を抱いてしまいます。
また、セラミドが増えるという比較対象も『ヒト型セラミド1,2,3』だけではなく、同じようにセラミド増産効果があるとされる他の原料と比較してほしいです。
そうでなければ、図4の倍率がすごいのか、しょぼいのか判断できません。
たとえば、
スフィンガニン
レリピディアム
ハイドラノブ P
これらの化粧品原料もセラミド増産効果があると主張しているので、次回は、ぜひ比較してほしいです。
3-1-5.ヒト型セラミド効果検証⑤
画像引用元:小林製薬ニュースリリース「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見 セラミド産生促進効果を確認より
この研究最後の『ヒト型セラミド1,2,3』の水分蒸散率を示した図5を見てみましょう
『ヒト型セラミド1,2,3』を添加したら、水分の蒸発する量が約25%減ったことを示しています。
これも比較がないので、この水分蒸散率がすごいのか、普通なのか、判断できません。
ぜひ、普通のワセリンでいいので比較してください。
何も塗っていない状態と比較して25%程度なら、それほど効果があるようには思えません。
また、濃度が濃くなっても、効果がほとんど変わらないのも疑問です。
本来、ただの油分でも使う量が増えれば、油の膜が厚くなり水分蒸散を抑えます。
なのに、セラミドは濃度を増やしても水分蒸散効果がないということは、そもそも保湿効果が乏しいのではないかと疑ってしまいます。
3-2.『「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見』のリリースからセラミドの効果を検証する
次に、2017年10月にリリースされた「『ヒト型セラミド1,2,3』」の肌への有効性を新発見・肌のたるみ改善効果を確認」を見てみましょう。
今回の実験結果は以下の通りです。
- 『ヒト型セラミド1,2,3』混合物を配合した、化粧水、クリームの4週間使用試験で、角層水分量の増加、キメの改善、肌のたるみの改善を確認
- 『ヒト型セラミド1,2,3』混合物が繊維芽細胞を活性化し、コラーゲン収縮能を促進する
- 『ヒト型セラミド1,2,3』混合物が繊維芽細胞のコラーゲン接着因子、インテグリンの発現量を増加させる
- 『ヒト型セラミド1,2,3』混合物が繊維芽細胞において、弾性線維の構成因子であるフィブリリンの発現量を増加させる
「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見・肌のたるみ改善効果を確認―2017年10月23日~25日 IFSCC2017国際化粧品技術者会連盟中間大会(韓国)にて発表―/2017年10月26日小林製薬ニュースリリースより
実験内容を簡単にまとめると、要は、セラミド効果は、いろんな肌の悩みに対応できるよということです。
3-2-1.ヒト型セラミド効果検証①
画像引用元:小林製薬ニュースリリース「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見 肌のたるみ改善効果を確認より
『ヒト型セラミド1,2,3』混合物を配合した、化粧水、クリームの4週間使用試験で、角層水分量の増加、キメの改善、肌のたるみの改善を確認した根拠の図1を見てみましょう。
この図1だけを見ると、それぞれ効果があるように見えます。
しかも、人の肌を使い、現実的に化粧水とクリームを使って検証しています。
前回の実験方法と比べても現実的で信頼できそうです。
でも、致命的な落とし穴があります。
まず、比較対象が明確ではない点。
図1は、使用前とセラミド化粧水、セラミドクリームを塗布した場合の比較なんですが、使用前という状況がどんなのか分かりません。
化粧品を使ったスキンケアを行っていない状況?
もし、そうなら、スキンケアをおこなっていない期間はどれぐらいなのか?
ここら辺を明確にしてもらわないと、正しいセラミド効果の判断ができません。
使用前がスキンケアを行ってないと仮定すると、この図に示された効果は大したことありません。
セラミドが配合されていない化粧品を使っても同等程度の効果が出るでしょう。
もしかしたら、もっと高い効果が出る可能性もあります。
セラミドが既存の化粧品成分よりも優れているというなら、既存の化粧品成分と比較するべきです。
自社の既存化粧品でもいいので、ぜひ、何かしらの化粧品を使ったスキンケアと比較してほしいところです。
3-2-2.ヒト型セラミド効果検証②
次に、化粧水とクリームを使ったのことですが、なぜ、2つのアイテムを使ったのでしょうか?
本来、セラミド単体の効果を試すなら、セラミド配合のクリームだけでいいはずです。
ただ、この場合は、セラミドを油剤に溶かすために、油溶性分の効果も発揮されてしまいます。
厳密に言うと、セラミド成分単体の効果となりません。
本当なら、できるだけ不要な要素を配合して、純粋にセラミド成分単体の効果を追い求めるべきでしょう。
クリームだけでも、油分という不確定要素が入るのに、さらに、化粧水まで使う意味が分かりません。
そうなると、もはや一般的なスキンケアの効果も加味されてしまいます。
もちろん、セラミドの効果もどんどん薄れてしまいます。
この図1のセラミド効果の結果そのものも大した効果と言えないし、比較対象もよく分からない。
もし、比較対象が化粧品を使ったスキンケアを行っていない状態なら、さらにセラミド効果が不明。
また、その結果、化粧水、クリームを使っているために、セラミド単体の効果とは言えません。
3-2-3.ヒト型セラミド効果検証③
画像引用元:小林製薬ニュースリリース「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見 肌のたるみ改善効果を確認より
次に、図2の『ヒト型セラミド1,2,3』混合物を配合した化粧水とクリームを使用したアンケート結果なのですが、これは実験ではありません。
言わずもがな、アンケートは回答者・内容・取る状況によって人為的にコントロールできるため客観性がないので、飛ばします。
3-2-4.セラミド効果検証④
画像引用元:小林製薬ニュースリリース「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見 肌のたるみ改善効果を確認より
次に、『ヒト型セラミド1,2,3』混合物がコラーゲンに良い効果をもたらす根拠です。
図3は、『ヒト型セラミド1,2,3』混合物が繊維芽細胞を活性化し、コラーゲン収縮能を促進する結果。
画像引用元:小林製薬ニュースリリース「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見 肌のたるみ改善効果を確認より
図4は、『ヒト型セラミド1,2,3』混合物が繊維芽細胞のコラーゲン接着因子、インテグリンの発現量を増加させる結果。
画像引用元:小林製薬ニュースリリース「ヒト型セラミド1,2,3」の肌への有効性を新発見 肌のたるみ改善効果を確認
図5は、『ヒト型セラミド1,2,3』混合物が繊維芽細胞において、弾性線維の構成因子、フィブリリンの発現量を増加させる結果。
3つまとめていきます。
細胞当たりのATP量、コラーゲンゲルの収縮能、インテグリンα2、フィブリリン1、すべてが『ヒト型セラミド1,2,3』混合物の濃度別の比較になっています。
その結果は、ひとつを除きあとは全部凸凹です。
なぜ、濃度が増えると減少するのか?
その結果が、本当に優位性を示しているのか?
確かに、何もしていない状態よりは優位性があるものの、非常に疑問を感じます。
配合量が増えているのに、効果が下がるのって納得できません。
きれいな右上がりを見せているのは、インテグリンβ1だけです。
インテグリンβ1だけは、実験結果として信頼できそうです。
もちろん、これらの実験も人為的に作られた環境でセラミド効果を出すために特化された実験方法です。
その割に大した結果が出ないように感じます。
まとめ
セラミド化粧品を使うなら、ヒト型ナノセラミドが配合された化粧品の方が美肌効果が期待できます。
ただ、まだまだ実験段階で、化粧品に配合したセラミドが、今回の実験結果と同じ効果を発揮するわけではありません。
現状では、セラミドの美容効果は、普通の化粧品成分と同等です。
そのため、あまり高い美容効果を期待をしないほうが良いでしょう。
さらに、今回紹介したような実験結果がセラミド化粧品で起きたなら、副作用の懸念があります。
そのため、肌の弱い敏感肌の方には、おすすめしづらいしづらいのが本音です。
もし、敏感肌の方がセラミドの効果を実感したいなら、化粧品よりサプリをおすすめします。
サプリなら肌への悪影響はありません。
また、セラミドを摂取することで、保湿効果のあるエビデンスもあります。