私たちの肌はたくさんの「常在菌」によって守られています。
皮膚表面や毛穴の中に、約20種類、数百億個、膨大な数の常在菌が存在しています。
常在菌が絶妙なバランスを保ちながら、肌を守っています。
常在菌が多いと肌は健康で若々しい状態が保たれます。
逆に、常在菌が少ないと肌荒れが引き起こされて、シミやシワが増えることに。
肌の常在菌を増やすことは、「美肌」を保つ上で非常に大切なことです。
数ある常在菌の中でも「美肌菌」と呼ばれる、「表皮ブドウ球菌」が美肌をつくるカギを握っています。
表皮ブドウ球菌は、肌に潤いを与えるだけでなく、「肌に悪い常在菌」を抑制する働きがあります。
そのため、表皮ブドウ球菌を増やすことが美肌を保つ秘訣です。
表皮ブドウ球菌を増やすには、2つの方法があります。
表皮ブドウ球菌を増やす2つの方法
- 今ある肌の表皮ブドウ球菌を減らさない
- 表皮ブドウ球菌が増えるケアを行う
この2つを同時に行うことで、最短で表皮ブドウ球菌を増やせます。
この記事では、表皮ブドウ球菌を増やす2つの方法について説明しています。
美肌菌である表皮ブドウ球菌を増やして、いつまでも健康で若々しい肌を保ってください。
1.肌の常在菌
私たちの肌は、常在菌に守られています。
肌の常在菌には、3つのタイプがあります。
肌の常在菌4つのタイプ | |
善玉菌(ぜんだまきん) | 肌を守る菌 |
日和見菌(ひよりみきん) | 肌を守ることもあれば、肌荒れを引き起こすこともある菌 |
悪玉菌(あくだまきん) | 肌トラブルを引き起こす菌 |
肌の常在菌は、善玉菌・日和見菌・悪玉菌の絶妙なバランスの上に存在しています。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1-1.善玉菌(表皮ブドウ球菌)
善玉菌の代表的な菌は、「表皮ブドウ球菌」です。
表皮ブドウ球菌は、別名「美肌菌」とも呼ばれる肌を守る働きをする菌です。
全身の皮膚の角質のすき間などに存在しています。
菌数の多い顔では、数億個が生息しています。
表皮ブドウ球菌は、皮脂や汗(アルカリ性)を餌に、グリセリンや脂肪酸を作り出します。
グリセリンは、肌にうるおいを与え、バリア機能を高める効果があります。
脂肪酸は肌を弱酸性に保ち、抗菌ペプチドを作り出すことで、黄色ブドウ球菌(悪玉菌)の増殖を防ぎます。
このように、表皮ブドウ菌は、肌をうるおいを与え、バリア機能を高める働きをします。
さらに、悪玉菌である黄色ブドウ球菌の増殖から肌を守ります。
美肌を手に入れるうえで、もっとも大切な働きをする菌といえるでしょう。
1-2.日和見菌(アクネ桿菌)
日和見菌で代表的な菌は、「アクネ桿菌(かんきん)」です。
アクネ桿菌は嫌気性菌です。
酸素がある環境ではほとんど増殖できず、死んでしまいます。
そのため、酸素のない毛穴や皮脂腺に存在します。
- 嫌気性菌とは
- 嫌気性菌とは生育に酸素を必要としない細菌のことです。
皮脂を餌に「プロピオン酸」や「脂肪酸」を作り出すことで、肌表面を弱酸性に保ちます。
肌を弱酸性にすることで、皮膚に付着する病原性の強い細菌の増殖を抑える働きをします。
一般的に、アクネ桿菌はニキビの原因と言われていますが、過剰に増殖しなければ、肌に良い働きをします。
ただ皮脂の分泌量が増えたり、表皮の角化や炎症などで毛穴が塞がると、アクネ桿菌が過剰に増殖し炎症を引き起こしてニキビの原因に。
このようにアクネ桿菌は、うまく付き合えば美肌効果に、付き合う方を間違うとニキビの原因となる菌です。
付き合い方によって、良くも悪くもなる菌といえます。
1-3.悪玉菌(黄色ブドウ球菌)
悪玉菌で代表的な菌は、「黄色ブドウ球菌」です。
黄色ブドウ球菌は、皮膚表面や毛穴に存在します。
存在しているだけだと無害です。
ブドウ球菌の中では病原性が高く、皮膚がアルカリ性に傾くと増殖して、肌にトラブルを引き起こします。
かゆみや肌荒れ、アトピー性皮膚炎の原因になります。
傷を受けた皮膚をそのままにしておくと化膿し悪化させてしまいます。
アルカリ性の環境下を好むので、肌の弱酸性を保つ善玉菌が少ないと増加する傾向があります。
このように、黄色ブドウ球菌は、美肌にとって何のメリットもない菌です。
でも、常在菌のバランスをとるには必要な菌です。
2.表皮ブドウ球菌(美肌菌)を減らさない方法
美肌菌チェック
どれかひとつでも当てはまっていると美肌菌が減少するかもしれません。
「表皮ブドウ球菌」は、肌にうるおいを与え、バリア機能を高めるだけでなく、悪玉菌である「黄色ブドウ球菌」の繁殖も防いでくれます。
表皮ブドウ球菌は、美肌を手に入れるためにもっとも大切な菌であり、「美肌菌」と呼ばれるゆえんです。
そのためには、「今ある表皮ブドウ球菌を減らさない」ことが大切です。
表皮ブドウ球菌は角質層に存在しているため、無理に角質を落とすような行為をすると減ってしまいます。
東京女子医科大学東医療センター皮膚科の出来尾格氏の「顔の常在菌を大切にしよう」によると、「表皮ブドウ球菌が復活するには半日かかる」と言います。
つまり、不用意に角質を落とすような行為をしてしまうと、表皮ブドウ球菌が少ない肌の状態が半日も続いてしまいます。
表皮ブドウ球菌が減ると、肌がアルカリ性に傾きやすくなり、黄色ブドウ球菌の好む肌環境になります。
その結果、黄色ブドウ球菌が繁殖して、かゆみ、肌荒れ、アトピー性皮膚炎になる可能性が高くなります。
だから、以下のような表皮ブドウ球菌が減るような行為は避けましょう。
- 長時間の入浴
- 洗浄力の強い洗顔料の使用
- 過剰な洗顔回数
- 洗顔時の肌への刺激
- 肌の乾燥
- 溶かす・削るタイプのピーリング
- 肌への過度な刺激
- 消臭スプレーの多用
2-1.長時間の入浴を控える
長時間、入浴することで肌がふやけてしまい、バリア機能が弱まります。
バリア機能が弱まることで、肌内部の成分が流れ出やすくなります。
そのため、表皮ブドウ球菌が減ってしまいます。
入浴時間は5~10分程度にしておきましょう。
2-2.洗浄力の強い洗顔料の使用を控える
強い洗浄力は、表皮ブドウ球菌を減少させてしまいます。
そのため、できるだけマイルドな洗顔料を使用しましょう。
2-3.過剰な洗顔回数を減らす
洗顔をするたびに、表皮ブドウ球菌は減少します。
そのため、洗顔回数は必要最低限にしておきましょう。
基本的には、朝と夜の2回程度をおすすめします。
2-4.洗顔時の肌への刺激を減らす
洗顔時のゴシゴシ洗いは避けましょう。
物理的な刺激によって、表皮ブドウ球菌は減少します。
洗顔は、手のひらでやさしく丁寧に行いましょう。
2-5.肌の乾燥状態を避ける
肌の乾燥は、表皮ブドウ球菌の大敵です。
乾燥した状態だと表皮ブドウ球菌が棲みにくく、皮膚はアルカリ性に傾いてしまいます。
そのため、湿度の低い環境や冷暖房の直風など、肌の乾燥を招く環境は避けましょう。
2-6.ピーリングを控える
角層を剥がすピーリングは控えましょう。
角層を剥がすと、同時に表皮ブドウ球菌もなくなります。
AHA(フルーツ酸)配合の溶かすタイプや、クルミやスクラブなど削るタイプのピーリング化粧品の使用は控えましょう。
2-7.肌への過度な刺激を減らす
肌に過度な刺激を与えることで、表皮ブドウ球菌が減ってしまいます。
以下のような行為は表皮ブドウ球菌が減少するので控えましょう。
- 美顔ローラーでのマッサージ
- パッティング
- コットンの使用
- 化粧品の使いすぎ
- フェイスマッサージ など
できるだけ肌に刺激を与えないケアで表皮ブドウ球菌の減少を食い止めましょう。
2-8.消臭スプレーを控える
女性は、ニオイに敏感です。
体臭すらも不快に感じる場合があります。
そのため、ニオイを消す消臭スプレーを多用する人がいます。
消臭スプレーを使うことで、ニオイを消すことができます。
でも、消臭スプレーには、殺菌効果のある成分が配合されています。
そのため、ニオイと同時に常在菌も減ってしまう可能性があります。
ニオイにあまり過敏にならず、常在菌を減らす消臭スプレーを控えましょう。
3.表皮ブドウ球菌(美肌菌)を増やす方法
インターネット上で「美肌菌を増やす化粧水」「美肌菌を育てる美容液」などの広告を目にすることがあります。
しかし、化粧品にそのような効果はありませんし、薬機法でも認められていません。
また、表皮ブドウ球菌は、その人個人のもので他人のものは定着しないと言われています。
そのため、外部から補給することができません。
※参考:厚生労働省「化粧品の効果効能」、価格コム(番組情報提供:(株)ワイヤーアクション)「「表皮ブドウ球菌」に関連する情報」
つまり、美肌菌である表皮ブドウ球菌は、化粧品で増やすことができません。
肌の常在菌は、善玉菌である「表皮ブドウ球菌」、日和見菌である「アクネ桿菌」、悪玉菌である「黄色ブドウ球菌」
これら3つの絶妙なバランスの上で成り立っています。
お互いがお互いを助け合う互助会のような関係にあり、このバランスが崩れると、肌荒れが引き起こされます。
常在菌は、菌の量より、バランスが重要なのです。
そのため、表皮ブドウ球菌だけを増やしても意味がありません。
善玉菌、日和見菌、悪玉菌をバランスよく地道に増やしていくことが大切です。
つまり、表皮ブドウ球菌を増やすには、毎日、コツコツと正しいケアを積み重ねる必要があります。
この章では、正しいケアを詳しくご紹介します。
肌の常在菌が少なくて肌荒れが起きている人は、これらができていない可能性が高いので、これを機に見直してみましょう。
3-1.肌を清潔に保ちましょう
表皮ブドウ球菌が繁殖するためには、清潔な肌状態が必須です。
そのために、日々のケアで肌を清潔に保ちましょう。
メイクや日焼け止めは、肌にとって異物です。
これらが肌に残っていては表皮ブドウ球菌の繁殖を阻害します。
そのためメイク落としや洗顔料でしっかりと落としましょう。
メイク落としや洗顔時に、表皮ブドウ球菌も流れ出てしまいますが、異物が残っているよりはマシです。
3-2.洗顔後・入浴後は、すぐに保湿しましょう
洗顔後や入浴後は、肌の上の水分が気温や体温によって蒸発します。
その際、肌内の水分も蒸発しやすくなり、さらに肌の乾燥状態が進みます。
そのため、洗顔後と入浴後は、すぐに保湿を行いましょう。
うるおった肌環境は、表皮ブドウ球菌の繁殖を助けます。
保湿しても肌が乾燥する場合は、あなたの肌が敏感になっている可能性があります。
その場合、通常の保湿をおこなっても、肌はうるおいません。
もし、あなたの肌が敏感肌で乾燥しているなら、敏感肌の保湿方法について書いた記事「恥ずかしくて聞けない!敏感肌の保湿に大切な「たったひとつ」のこと」これを参考に保湿方法を見直してください。
「思っていた保湿と違った!」
「もっと早く知りたかった~」
というお声をいただく記事ですので、きっと正しい保湿の参考になりますよ。
3-3.日常的に、汗をかきましょう
汗は、ニオイの問題もあり嫌われがちですが、表皮ブドウ球菌の栄養になります。
そのため、日常的に汗をかくことで、表皮ブドウ球菌の増える可能性が高まります。
毎日、ウオーキングなど軽めの運動を30分程度行うのが理想です。
運動が嫌いなら、サウナでもいいです。
一番楽に汗をかく方法は、8時間しっかり睡眠をとることです。
大塚製薬の「“シーン別”汗をかく量は?」によると、8時間睡眠で500mlも汗をかくことができるとのこと。
皮膚科医の清水 宏氏「あたらしい皮膚科学 第三版(中山書店)」によると、汗のでる汗腺は、女性は10~20歳代、男性は30~40歳代をピークに減少します。
そのためピーク以降は、どのような方法でもいいので、継続性を重視して、汗をかく習慣を身に付けましょう。
3-4.メイクをしない日をつくりましょう
メイクをすると、どうしてもクレンジングをする必要があります。
特に、皮脂や汗に強いメイクが好まれる昨今、クレンジングの洗浄力も強くなりがちです。
メイクを肌に残すことは、肌への刺激となり表皮ブドウ球菌を減らす原因になります。
とはいえ、メイクを落とすクレンジングの強い洗浄力も、表皮ブドウ球菌の大敵です。
そこで、クレンジングを使わない日を作りましょう。
つまり、メイクをしない日です。
メイクをしなければ、クレンジングをする必要もありません。
そのため、表皮ブドウ球菌が増える環境が整います。
最低でも、週に一日メイクをしない日を作って、表皮ブドウ球菌が増えやすい環境をつくることをおすすめします。
3-5.50%の湿度をキープしましょう
菌は乾燥を嫌います。
空気が乾燥して、湿度が低いと菌は減っていきます。
美肌菌である表皮ブドウ球菌も同様です。
特に、冷暖房の直風は厳禁です。
そこで、菌が繁殖しやすい湿度50%をキープしましょう。
湿度が高ければ高いほど、菌には良いのですが、60%以上になると、カビが生えやすくなるので注意が必要です。
3-6.1日で、1.5リットルの水を飲みましょう
菌は、うるおった状態を好みます。
だから、肌のうるおいは、美肌菌である黄色ブドウ球菌を増やすために大切な要素です。
スキンケアで保湿して肌にうるおいを与えるのもいいのですが、水分を摂取することも効果的です。
一般的に、食事以外で1.5リットルの水が必要とされています。
※参考:「Water as an Essential Nutrient: The Physiological Basis of Hydration」
そのため、一日に1.5リットル以上の水を飲んで、黄色ブドウ球菌が増えやすいうるおった肌環境を整えましょう。
まとめ
肌の常在菌である表皮ブドウ球菌(美肌菌)を増やすには、まず、表皮ブドウ球菌を減らさないことが先決です。
そのために、以下のような行為は止めましょう。
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次に、表皮ブドウ球菌が増えるケアを行いましょう。
具体的には以下のことです。
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これらの方法で、今ある表皮ブドウ球菌を維持しつつ、バランスよく増やしていきましょう。
一朝一夕という訳にはいきませんが、表皮ブドウ球菌が増えるとあなたの肌も健康で若々しい肌になります。
ぜひ実践してみましょう。