敏感肌や乾燥肌に大人気の成分『セラミド』。
セラミド化粧品、セラミドクリーム、セラミド美容液など、多くの化粧品に配合されています。
セラミドは、保湿効果がある成分です。
でもそれだけとは思えないほど、非常に人気があり、世間一般には「セラミドにはすごい効果がある」と言われています。
そこで、株式会社アースケアは女性104名に「セラミドの認知度」に関する調査を行いました。
●調査結果
セラミドという成分を知っていても、効果を知らない方々が多いことがわかりました。
私は化粧品の製造メーカーとして開発もしているため、「そんなにすごい効果があるなら使ってみたい!」と思い、セラミドについて詳しく調べてみました。
その結果わかったことは、「セラミドにはすごい効果がある」とされるのは、『細胞間脂質』の美肌効果とのすり替えで生まれた、間違った認識だということです。
実際に高い美肌効果を持っているのは、「セラミド」ではなく、「細胞間脂質」でした。
もし、あなたがセラミド化粧品に興味があるなら、ぜひこの記事を参考にしてください。
この記事を読むと、
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その結果、あなたの肌にセラミドの効果が必要なのか判断できます。
1. すごい効果があるのはセラミドではなく『細胞間脂質』
「セラミドにはすごい効果がある」という根拠を探していて、こんな結論にたどり着きました。
それは、すごい効果があるのはセラミドではなく、「細胞間脂質だ」という事実です。
高いバリア効果や保湿効果は、セラミド単体ではなく「細胞間脂質」によるものです。
バリア機能や保湿効果の高さも、セラミドではなく、「細胞間脂質の構造」によるものです。
セラミドだけではなく、コレステロールや遊離脂肪酸、コレステロール硫酸が結びついて、はじめて細胞間脂質としての役割が成立します。
セラミド単体では、細胞間脂質の役割は果たせません。
なのに、いつの間にか、「セラミドの効果=細胞間脂質の役割」にすり替わっています。
細胞間脂質に含まれるセラミドの含有量が多いからなのか、理由はわかりません。
でも、多くの人は勘違いをしているようです。
この章では、多くの人がしている大きな勘違いについて、詳しくお話します。
1-1.セラミド化粧品の効果を誤解した、大きな勘違い
セラミド単体と細胞間脂質はまったくの別物です。
でも、いつの間にか陥っている大きな勘違いは、こんなすり替えが起こっているからでした。
私たちが生きる上で欠かすことのできない細胞間脂質のバリア効果&保湿効果。 そして、その効果を発揮しているのは、「ラメラ構造」という素晴らしい構造。 ↓ その効果は絶大で、深刻な肌トラブルであるアトピー肌にも深く関わっている。 どうやらアトピー肌は、細胞間脂質の半分を占めるセラミドが少ない特徴があるらしい。 ↓ アトピー肌の原因がセラミドの減少なら、セラミドを塗ればいい。 何と言ってもすごいバリア効果&保湿効果をもつ細胞間脂質の半分を占めているセラミドだから。 ↓ いつの間にか、世間では、 細胞間脂質の役割=セラミドの効果 ↓ さらに、いつの間にか、 細胞間脂質の役割=セラミド化粧品の効果 |
というように。
大事なことなので、もう一度確認します。
「セラミド」と「細胞間脂質」はまったくの別物です。
万が一、細胞間脂質で同化すれば、細胞間脂質が有する優れたバリア機能や保湿効果は消滅します。
それどころか我々の体にとって深刻なリスクをもたらすかもしれません。
それでは、細胞間脂質の働きについて詳しく見てみましょう。
1-2.「細胞間脂質」の構成
セラミドは細胞間脂質に含まれる成分です。
セラミドの効果は主に、『バリア効果』と『保湿効果』です。
「化粧品成分のセラミドは、この2つの効果が、既存にある化粧品成分よりも効果が高い。
だから、肌が乾燥してバリア効果が落ちている敏感肌や乾燥肌に必須の成分」とされています。
このように言われるには理由があります。
それは、『細胞間脂質にあるセラミド』がもたらす効果によるものです。
ここで、細胞間脂質にあるセラミドの役割について、簡単に説明しておきます。
わずか0.02mmの食品用ラップと同じ厚さである角質層に、セラミドは存在しています。
そんな極薄の角質層ですが、10〜20層の角層細胞と細胞間脂質で構成されています。
構成比率でいうと、角質層の90%が角層細胞で、残りの10%が細胞間脂質です。
そして、この細胞間脂質は、セラミド、コレステロール、遊離脂肪酸、コレステロール硫酸で構成されています。
構成比率は、セラミド約50%、コレステロール約25%、遊離脂肪酸約21%、コレステロール硫酸約4%。細胞間脂質の約半分をセラミドは占めています。
1-3.細胞間脂質の『ラメラ構造』
次に、その構造を見ていきましょう。
セラミドが含まれる細胞間脂質は、『ラメラ構造』になっています。
ラメラとは、『層状』という意味です。
細胞間脂質は、セラミドを始めとする体内成分によって、水分と油分が交互に層になっています。
ミルフィーユのようなイメージです。
細胞間脂質に含まれるセラミド、脂肪酸、コレステロールは、それぞれが水になじみやすい親水基と、油になじみやすい親油基という特性を持っています。
この特性のおかげで、水分と油分を規則正しく並べて、緻密な層状に配置することが可能となります。
用途は違うものの、界面活性剤とよく似た特性と言えます。
1-4.『細胞間脂質』の役割・効果
次に、セラミドが含まれる細胞間脂質の役割・効果を見ていきましょう。
肌(角質層)は、『角層細胞』という細胞がたくさんくっついて構成されています。
そして、角層細胞同士は、細胞間脂質によって繋ぎとめられています。
簡単に言えば、細胞間脂質は、接着剤のような役割ですね。
また、細胞間脂質はラメラ構造によって、外界からの刺激成分の侵入を防いでくれます。
水溶性の刺激成分は油分の層が、油分の刺激物は水分の層が防いでくれます。
また、万が一、1層が突破されても、10層程の多層になっているため、次の層で防いでくれます。
このように、ラメラ構造は、非常にバリア効果の高い構造です。
さらに、ラメラ構造には、多層構造による、水分を逃がさない高い保湿効果があります。
以上のことから、セラミドが含まれる細胞間脂質は、私たちの肌を健やかに保つために必要不可欠な役割を果たしていることがわかります。
2. セラミドに体内のセラミドを増やす効果はない
細胞間脂質のセラミドは、加齢とともに成分量が減少していきます。
他にも、肌のうるおいを保持する成分や水分なども、総じて減少していきますので、年齢を重ねるとともに、肌は乾燥しがちになります。
そして、これが肌荒れの原因となります。
そのため、化粧品メーカーの中には、「体内で美肌成分が減少するなら、化粧品で補いましょう」と宣伝しているところがあります。
少し前なら、コラーゲン、ヒアルロン酸、プラセンタなどです。
ご存じだとは思いますが、化粧品を塗ることで、体内の成分が増えることはありません。
コラーゲン、ヒアルロン酸、プラセンタは角質層より深い部分にあるので、化粧品成分は届きませんので、作用のしようがありません。
ただ、セラミドは角質層に存在します。
そのため、化粧品成分であるセラミドが細胞間脂質の中にまで届きます。
だから、これまでのコラーゲン、ヒアルロン酸、プラセンタとは違い、角質層に存在して、そこに届くセラミドは、大人気になったのです。
化粧品に配合されたセラミドが角質層に浸透して、細胞間脂質のセラミドと合体する。
そうすることで、老化によって失われたセラミドが増えて、角質細胞を強固につなぎとめて、バリア効果・保湿効果が飛躍的に高まる。
こんなイメージが先行して、セラミドは大人気成分となりました。
もちろん、これは間違いです。
セラミドに、体内のセラミドを増やす効果はありません。
人の体は、こんなに単純ではありません。
また、以下のような事実が、セラミドによって、体内のセラミドが増えない事実を立証しています。
- 「化粧品成分のセラミドが、細胞間脂質のセラミドを増やす」は薬事法違反
- セラミドに体内のセラミドを増やす効果があったら危険
詳しく見ていきましょう。
2-1.「化粧品成分のセラミドが、細胞間脂質のセラミドを増やす」は薬事法違反
そもそも、「化粧品成分のセラミドが、細胞間脂質のセラミドを増やす」と表現すると薬機法違反になります。
薬機法とは、厚生労働省が定めた化粧品の法律のことで、正式名称は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と言います。
その薬機法において、化粧品は、「体を清潔にしたり、見た目を美しくしたりする目的で、皮膚等に塗布等するもので、作用の緩和なもの」と定義されています。
化粧品は、多くの人が毎日使うもので、我々の生活に密接にかかわっています。
そんな化粧品に健康被害が起こっては大変なことになるからです。
そのため、『作用が緩和なもの』と定められています。
「セラミド入りの化粧品を塗るだけで、細胞間脂質のセラミドと結合して、セラミドが増える」という効果は、作用が緩和という定義から逸脱してしまいます。
もしセラミドにそんな効果があったら、もはや化粧品ではなく『医薬品』です。
セラミドが化粧品成分であるということは、『作用が緩和なもの』である証拠です。
だから、『体内のセラミドが増える』という医薬品のような効果はありません。
※化粧品の効果に関する詳しいことは、厚生労働省のサイトから、「2017年版化粧品等の適正広告ガイドライン」を読んでみてください。
化粧品工業の発展、国民生活の向上を目指して設立された『日本化粧品工業連合会』のサイト(化粧品等の適正広告ガイドライン)も詳しくて分かりやすいですから、興味のある方はぜひ読み込んでください。
2-2.セラミドに体内のセラミドを増やす効果があったら危険
体内の美容成分が老化で失われるため、肌が硬くなり、乾燥して、シワ・シミが増えます。
だからといって、単純に体内の美容成分が増えれば、いつまでも若々しい肌を保てると言う訳ではありません。
逆に、肌に悪影響をもたらします。
化粧品成分のセラミドが細胞間脂質のセラミドを増やすと仮定すると、細胞間脂質のバランスが崩れることでセラミドの効果はなくなり、健康被害リスクが増大するという矛盾が生じる可能性があります。
2-2-1.体内のセラミドが増えると、バリア機能が消失するかもしれない
化粧品成分のセラミドが細胞間脂質のセラミドを増やす効果があるとするなら、大きな矛盾が生じます。
細胞間脂質にあるセラミドの大切な役割は、『バリア効果』です。
前述のとおり、細胞間脂質のセラミドを含む細胞間脂質は、ラメラ構造によって優れたバリア効果を発揮しています。
バリア効果とは外部からの侵入を防ぐことです。
ですから、化粧品成分のセラミドの侵入でさえも、この優れたバリア効果によって防がれてしまいます。
以前に、
「セラミドは、角質層まで浸透する。
つまり、細胞間脂質がある場所まで浸透する。
ということは、セラミドは細胞間脂質に直接触れることになる。
細胞間脂質は半分以上、セラミドでできているので親和性が高いはず。
だから、セラミドが増えるのでは?」
という質問をいただきました。
何となく、一理あるような気がしますが、実は全然違います。
まず、『細胞間脂質にあるセラミド』と『化粧品成分のセラミド』はまったく別物です。
化粧品成分のセラミドが細胞間脂質に触れても体内のセラミドは増えません。
なぜなら、セラミドと細胞間脂質は別物だからです。
セラミドは、この細胞間脂質を構成する脂質の一つです。
まるで細胞間脂質は全てセラミドでできているようなイメージが拡散していますが、そうではありません。
それに、万が一、化粧品のセラミドが原因で、細胞間脂質のセラミドが増えると大変です。
細胞間脂質を構築するセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸、コレステロール硫酸のバランスが崩れてしまいます。
『バランスが崩れる』ことによる問題は、私自身、駆け出しのころ、化粧品を作っているときによく経験しました。
化粧品は、ちょっと配合量を間違えるだけで、全く別の化粧品ができてしまいます。
また、配合量は同じなのに、ビーカーで作ったものと1トン釜で作ったものとでは違うものができたりします。
ちょっと知識がついて処方をアレンジしたら、オールインワンジェルを作るつもりが、シャバシャバの化粧水が出来たなんてこともありました。
特に、基本となる成分をいじるとこういった現象は顕著に起きてしまいます。
細胞間脂質も同じです。
いくらセラミドが細胞間脂質の半分を占める重要な成分とは言え、セラミド単体の量が増えることは、細胞間脂質内の成分バランスを狂わせることになりかねません。
その結果、細胞間脂質は『変質』してしまい、まったく異なる物質になってしまいます。
もちろん、変質すると細胞間脂質と別物になるので、大切な役割であるバリア効果も失われます。
つまり、「化粧品成分のセラミドが外部から吸収されて、細胞間脂質のセラミドが増やせる」と仮定した場合、セラミド化粧品を使うと、細胞間脂質のバリア効果が消失することになります。
もちろん、こんな事例は今まで確認されていません。
もし、セラミド化粧品を使うことで細胞間脂質のセラミドが増えるという単純な理論が正しいのなら、コレステロール25%・遊離脂肪酸21%・コレステロール硫酸4%を混ぜれば、細胞間脂質が作れるはずです。
そして、混ぜたものを角質層に注入すれば、細胞間脂質が増えて、若々しい肌になるはずです。
でも、こんなことにはなりません。
2-2-2.体内のセラミドが増えると血管が詰まるかもしれない
化粧品成分のセラミドが細胞間脂質のセラミドに吸収されるということは、細胞間脂質のバリア機能を突破していることになります。
もし、セラミドが細胞間脂質を突破すると、体内にも侵入します。
バリア機能を突破して、肌の奥に浸透すると毛細血管の中にも入ります。
セラミドは油溶性の成分です。
油分が血管に入ると、血管が詰まる可能性があります。
そうなると命に関わるリスクが生じてしまい、セラミドは”危険な美容成分”ということになってしまいます。
当然、厚生労働省がこんな危険な成分を認可するわけがありません。
つまり、セラミドは、通常の化粧品成分です。
逆に、セラミドが化粧品原料として認可を受けてからもう何十年も経っているということは、こうしたリスクのない”安全な美容成分”という証明と言えます。
2-3.化粧品成分セラミドの効果とは
セラミドは、スフィンゴ脂質の一種です。
ですから、油溶性成分の一種です。
一般的にセラミドには、高い保湿効果があると信じている人が多いのですが、それは少し違います。
保湿効果とは、『水分が保たれた状態を生み出す効果』を指します。
セラミドは油溶性の成分なので、それ単体では保湿はできません。
水分が含まれていないので、単に油分を塗った状態になるだけで、セラミド単体に保湿効果があるとは言えません。
そのため、セラミドを使って、保湿効果を望むなら水分が必要となります。
水分を補給して、油分であるセラミドが過乾燥を防ぎ、水分が保たれます。
セラミドは化粧品原料で、油溶性成分に属する一成分です。
油溶性なので、水分の蒸発を防ぐ効果があります。
あとは、外部の刺激からの保護、肌を柔らかくする効果です。
一般的な油分と同じく、油溶性成分による保湿効果が期待できます。
参考:ヒト型セラミドの美肌効果とは【5つのセラミド実験結果で徹底検証】
3. 【ここまでのまとめ】|結局セラミドに効果はあるの?
これまでの章では少し専門的で難しいことを書いてきましたので、この章で一旦まとめます。
これまでの議論をまとめると以下のようになります。
セラミドに関する議論まとめ
- 凄いバリア機能&保湿機能をもつのは「細胞間脂質」であり「セラミド」ではない
- 「細胞間脂質」に「セラミド」は含まれるが、それは化粧品で増やすことはできない
- 化粧品成分のセラミドと細胞間脂質のセラミドは別成分
化粧品に含まれる「セラミド」は、一般的な乳液などと同じような「油分補給」の役割しか果たしていません。
肌の保湿やバリア機能と密接に関わる「細胞間脂質」をサポートするような、特別な効果は期待できないのです。
もし「化粧品成分のセラミドが、細胞間脂質のセラミドを増やす」などの表記があれば、それは薬事法違反ですから、気を付けましょう。
3-1. セラミドに効果がないなら、結局どうすれば良いのか?
先ほども述べたように、化粧品に含まれる「セラミド」は、一般的な乳液などと同じような「油分補給」の役割しか果たしていません。
ですから、もしセラミドが配合されたスキンケア商品を使うのであれば、肌に水分を補給する化粧水などが必要でしょう。
肌の「保湿」には、「水分」と「油分」を適切な割合で補給することが大切だからです。
ただ、セラミドは、化粧品成分としてはとても良い成分です。
それは、誤解がないようにはっきり言っておきます。
私はセラミドに効果がないと言っているわけでなく、一部、過剰に行われている、あたかも薬効もしくは既存の化粧品原料よりも格段の効果があると喧伝する行為は間違いだと感じ、それを率直に話しています。
あなたに合った化粧品を見つけるために大事なことは、化粧品単体の成分だけではありません。
肌との相性や第三者からの検査など、判断材料はいくらでもあります。
私も敏感肌で、乾燥肌だったので、化粧品選びやケア方法にはとても苦労をしました。
今から、特に敏感肌の方におすすめな「保湿スキンケア商品」を1つだけ紹介します。
セラミドは含まれていませんが、肌への安全性テストや、効能評価試験をパスしている商品ですから、高い保湿効果が期待できます。
お試しセットもついている商品ですから、もし「自分に合うスキンケア商品が分からない…」という方は、ぜひお試しください。
3-2. 高保湿でおすすめのオールインワンジェル│アクアテクトゲル
「アースケア アクアテクトゲル」は保湿に特化したオールインワンジェルのため、乾燥に悩む人の肌改善に役立ちます。
アクアテクトゲル1本だけで「肌に必要な保湿」が行えるため、化粧水や乳液、クリームなど複数の基礎化粧品を使う必要はありません。
手間や時間の削減だけでなく、お肌の刺激となる摩擦が通常のスキンケアの1/3になるため、乾燥した肌にしっかりとハリと潤いを与えられるでしょう。
実際にアクアテクトゲルを使用し続けた結果「4週間後に肌のうるおいがアップしたことが実証」されました。
「保湿に徹底的にこだわった」アクアテクトゲルを活用すれば、乾燥肌が正しい保湿バランスに整うでしょう。
とはいえ、乾燥肌の場合は「スキンケア商品に合う・合わない」が通常の方よりも悩みが多いです。
そのため「アースケア アクアテクトゲル」では、お試しセットが存在します。
「自分の乾燥肌に合うか心配」という方はまずはお試しセットを利用して、肌に合うかを確認してから、日常的に活用してみると良いでしょう。
4. 化粧品に配合されるセラミドは、アトピー性皮膚炎を改善するほど効果はありません
「セラミドは、すごい効果があるからアトピーにも効果がある」といわれています。
この根拠は、「アトピー性皮膚炎の人の細胞間脂質には、セラミドが少ない」という実験結果があるためです。
アトピー性皮膚炎の人の肌にセラミドが少ないのは、事実です。
エビデンスもあります。
厳密にいうと、セラミドだけでなく細胞間脂質そのものが少ないのです。
セラミド化粧品を使ったところで、細胞間脂質のセラミドが増えないことは、これまで述べましたので、お分かりいただけたかと思います。
ということは、もし、セラミドがアトピーに効果があるという話が真実なら、「セラミド化粧品は、肌の上で生じた何らかの効果によってアトピー性皮膚炎が改善できる」ということになります。
でも、セラミドは化粧品成分であり、医薬品ではありません。
そのため、特別アトピーに効果があるとはいえません。
でも、セラミド効果が一般的な油溶性成分と同等では、ここまでアトピー肌に効果があると噂になるのはおかしいです。
何か、噂の元があるはずです。
そこで、元となる情報を探してみました。
そして、「セラミドがアトピー肌に効果がある」という元を2つ見つけました。
4-1.『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016』でセラミドの効果を検証
アトピー性皮膚炎を患っている肌について、もっとも信頼できる「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」で検証してみましょう。
「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」は、公益社団法人日本皮膚科学会が作っています。
その名の通り、アトピー性皮膚炎を診療する際の指針が書かれており、医師に対する指針なので、かなり信頼性の高いガイドラインです。
例えばここに、「セラミドを塗布することがアトピー肌の劇的改善につながる」と書かれていれば、セラミドの効果は揺るぎないものになるでしょう。
そこで、最新版である2016年に発表されたガイドラインを読んでみました。
もしよかったら、あなたも読んでください→『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン(2016)』
この中で、一カ所だけ『セラミド』という言葉を見つけました。
その内容は、
「セラミドなどの角層細胞間脂質は、バリア機能を維持するために重要であると知られている3つある要素のひとつである」
というものでした。
これを根拠にセラミドがアトピー肌に効果があるとすると、弱い根拠すぎます。
さすがに、これだけではないだろうと思ったので、再度、ガイドラインを読み込みました。
すると、セラミドがアトピー肌に効果的と言われている根拠として使われていそうな文面がありました。
その場所は、P13とP27の外用薬について書かれているくだりです。
乾燥した皮膚への保湿外用薬(保湿剤・保 護剤)の使用は,低下した角層水分量を改善し,皮膚 バリア機能を回復させ,皮膚炎の再燃予防と痒みの抑 制につながる(CQ9.推奨度 1,エビデンスレベル. A)75)76).また,抗炎症作用のある外用薬などの治療で 皮膚炎が寛解した後にも,保湿外用薬を継続して使用 することは,寛解状態の維持に有効である77)78).保湿外 用薬による維持療法中に皮膚炎の再燃がみられた部位 には,炎症の程度に応じてステロイド外用薬やタクロ リムス外用薬などを使用し,炎症の早期の鎮静化およ び維持療法へと回帰することを目指す.一方で,保湿 外用薬の副作用としての接触皮膚炎の発生には注意が 必要であり,アトピー性皮膚炎の再燃との鑑別は重要 である.
引用.13ページ『4.皮膚バリア機能の異常に対する外用療法・スキンケア』より
皮膚炎の症状のある状態に対しては,ステ ロイド外用薬と併用して保湿剤を外用することが勧め られ,皮膚炎の症状がない状態でも保湿剤を継続的に 外用することが勧められる. 推奨度.1,エビデンスレベル.A 解説.皮膚の乾燥はアトピー性皮膚炎の主症状の一 つであり,表皮のバリア機能の破綻の原因の一つであ る.保湿剤の外用が,乾燥症状の軽減とバリア機能の 改善に効果的であることは,多くの基礎研究や臨床研 究によって示されている173)~182).特に,治療によって皮 膚炎が寛解した後に保湿剤の外用を継続することは, 皮膚炎の再燃を予防し,かゆみも軽減した状態が保た れる183)184).皮膚炎症状に対しては,保湿剤単独の使用 のみではあまり効果が期待できないが,ステロイド外 用薬と併用することで,乾燥症状やかゆみが改善する のみならず,皮膚炎症状が軽快した後の寛解状態の維 持にも効果的に影響する185).また,ステロイド外用薬 に保湿外用薬を併用することでステロイド外用薬の使 用量を減少させる可能性がある186).ただし,保湿剤に よる接触皮膚炎などの有害事象が起こりうることにも 注意しなくてはならない.
引用.27ページ『CQ9.アトピー性皮膚炎の治療に保湿剤外用は勧 められるか』
要約すると、
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といったことが書かれています。
「外用薬がアトピーに一定の効果がある」ことは書かれていますが、セラミドによるアトピーへの効果については一切出てきませんでした。
4-2.『アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2008』で検証
続いて、臨床医による具体的な治療に関してまとめた「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2008」から引用します。
アトピーに一定の効果があるのは、「外用薬」とされています。
主な保湿外用薬は、ワセリン、亜鉛華軟膏、浸水軟膏、尿素含有製剤とありますので、油分たっぷりなクリームが一般的です。
これは医師が処方して病院や薬局で受け取りますので、もちろん保険が効きます。
「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2008」にもセラミドは出てきません。
そこで、保湿外用薬について調べてみました。
当初、医薬品だけかと思ったらそうではありません。
『保湿外用薬=保湿剤』となっていました。
どうやら保湿効果のある医薬品・化粧品をまとめて、保湿外用薬と呼ぶようです。
そのため、ガイドラインにも、保湿外用薬の後に、わざわざカッコ書きで保湿剤と書かれていたのだと思います。
保湿剤を調べるとセラミドが配合されているものがありますが、特にセラミドがアトピーに効果があるという記述はありません。
やはり、ただの一化粧品成分として配合されているようです。
「アトピー性皮膚炎を患っている人の細胞間脂質には、セラミドが少ないという結果がある」という事実を根拠に、あたかもセラミドに薬効並みの効果があるようにミスリードする意図を感じます。
結局、ガイドラインからは、セラミドによるアトピー肌改善効果を立証する確たる根拠を見出すことはできませんでした。
5. セラミドの効果を製薬会社の視点から見てみました
セラミドに、薬効並みの効果(ステロイドなど)があると仮定してみましょう。
もしそうなら、セラミドはすでに、医療用の製剤として世に出ているはずです。
実は、化粧品成分の中には、「これ、化粧品原料にして大丈夫かよ?」という成分があります。
その効果は絶大、医薬品で使われているレベルで化粧品に使うとトラブルを引き起こす可能性も絶大なので、配合比率や容量によって規制されています。
大体、このような成分は、もともと医薬品で使われている成分を大企業の力で化粧品にも使えるようにした経緯のものがほとんどです。
だから、セラミドも化粧品で使われている既存の成分より絶大な保湿効果があったら、すでに医薬品成分として使われているはずです。
そして、それがいろいろな経緯と思惑を経て、化粧品原料として使われるはずです。
でも、セラミドはそうじゃありません。最初から、現在もずっと化粧品原料です。
そこで、『製薬会社』の観点からセラミドを見てみましょう。
5-1.製薬会社にとってセラミドの『安全性』は魅力的
セラミドは化粧品原料として認められているので、安全性はかなり高いです。
これは間違いありません。
セラミドだけではなく、基本的に化粧品原料は効果より安全性が重視されています。
逆に、薬品は効果が重視されており、ある程度の副作用が許容されています。
もし、外部からセラミドを塗ることで、高い保湿効果を発揮して乾燥肌やアトピー肌が改善できたとしたら、こんな大きなメリットはありません。
セラミドの効果と既存薬品の効果が同程度だとしても、いや半分程度でも安全性の部分でかなり優位に立てます。
特に、ステロイドの副作用を嫌う方は多いので、セラミドの効果が医薬品よりも低くても好んで使う人が多いと思います。
実際に、私のところにも「ステロイドを使わなくていい方法を教えて欲しい」「ステロイドと同程度の効果を望める方法はあるか?」という質問をたくさんいただきます。
このように、ステロイドなど既存の薬品に比べて効果はともかく、セラミドが安全である優位性は揺るぎませんから、売れることは保障されているも同然です。
安全性の観点から見て、セラミドにそこそこアトピー改善効果があれば、薬品にするはずだと思います。
でも、現在もそうなってはいませんね…。
次に、期間と知名度の観点から見てみましょう。
5-2.製薬会社にとってセラミドの知名度は魅力的
セラミドは1950年に発見されたと言われており、1980年ごろから注目され始めました。
実際に、直近10年のセラミドの検索数をGoogle Trendsで見てみましょう。
この10年で化粧品メーカーが莫大なコストをかけて有名にした美容成分であるコエンザイムQ10とアスタキサンチンで比較してみましょう。
青色の折れ線がセラミドの検索回数を表しています。
セラミドは、ダントツの知名度と、いい感じの右上がりです。
ただ、さすがに、私が化粧品業界に入った20年前から『化粧品の三大美容成分』と言われるコラーゲン・ヒアルロン酸・プラセンタには及びません。
でも、現状、セラミドの化粧品原料としての知名度はベスト5に入るのではないでしょうか?
少なくともスキンケアに興味を持っている方に、「セラミドって知ってる?」と聞いて、「いや、聞いたことない」と答える人は少数だと思います。
ここまで歴史があり、知名度があるからこそ、セラミドにすごい効果があれば製薬会社が興味を示すと思います。
製薬会社は、いかに独自の薬品を開発するかがすべてです。(一部、ジェネリック薬品のように、そうではない場合もあります)
医薬品の特許存続期間は25年なので、もし、セラミドにすごい効果があって、薬品として認められれば、25年間、その利益を独占できます。
これはすごいチャンスです。
でも、今のところ、表立ったその動きは見受けられません。
5-2-1.セラミドが医薬品になる可能性はない
先程、医薬品の特許の存続期間が25年と言いましたが、一般的な特許は20年です。
なぜ医薬品だけ5年長いのかというと、安全性を確保するための試験や国の審査によって時間がかかるためです。
だから、その期間を考慮して最大で5年間の延長が認められています。
つまり、それだけ医薬品の特許には手間と時間がかかります。
少しでも医薬品になる可能性があるなら、効果や安全性に関するエビデンスや論文、実験結果があってもおかしくありません。
論文などの引用もされているはずです。
でも、化粧品成分としてある程度の知名度を確保したセラミドですが、研究関係では非常に静かです。
つまり、セラミドの効果というのは医薬品には遠く及ばないという証拠です。
実際に、化粧品に頻繁に使われるプラセンタやヒアルロン酸は医薬品になっています。
薬品として認可されていないことから、既存の化粧品原料と比べてセラミドに突出した効果がないと推察できます。
6. セラミドに関するよくある質問
セラミドに関する疑問や質問をまとめました。
セラミドは食べ物から摂取できる?
食品の中に、セラミドを多く含むものも存在しますので、摂取はできます。
ただ、それらをたくさん食べれば体内にあるセラミドと同等の働きができるわけではありません。
あくまでも栄養素の一つです。
また、栄養素は、セラミドだけでは不十分です。
セラミドを生成する栄養素や、肌を作る栄養素のタンパク質なども必要です。
日々からバランスの良い食事を心がけましょう。
セラミドはニキビに効果ある?
今のところ、「効果はない」とされています。
『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン(2016)』では、「外用薬がアトピーに一定の効果がある」ことは書かれていますが、セラミドによるアトピーへの効果については一切出てきません。
ニキビにも同様で、セラミドがニキビに効果的だと言える根拠は現状ではありません。
セラミドは髪に良い成分?
はい、セラミドは肌と同様に、髪にも欠かせない保湿成分です。しかし、セラミドを髪に塗るだけで髪質が良くなるものではないです。
まとめ
セラミドの正しい効果は以下の通りです。
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セラミドは、化粧品成分としてはとても良い成分です。
誤解がないようにはっきり言っておきます。
私はセラミドに効果がないと言っているわけでなく、一部、過剰に行われている、あたかも薬効もしくは既存の化粧品原料よりも格段の効果があると喧伝する行為は間違いだと感じ、それを率直に話しています。
最後にもうひとつあなたにお伝えしたいことがあります。
今回の記事は、「多くの人がすごい効果があるといわれているセラミドを調べてみたら、そんな根拠はなく、普通の化粧品成分だよ」という結果になりました。
でも、これはセラミドだけではありません。
実は、他のすごい効果のあるイメージをもつ成分も同様です。
つまり、化粧品成分単体では、それほど美容効果はありません。
化粧品成分単体だけで、化粧品の効果や安全性などを判別することはできません。
肌荒れに悩む人は、このことに気づかないために、ずっと肌荒れに苦しむことになります。
だからこそ、知ってほしいのです。
あなたにあった化粧品を見分ける方法は、セラミドなどの化粧品単体の成分ではないことを。
それよりも大切なことがあることを。
特に、敏感肌なら、化粧品の成分よりもっと大切なことがあります。
もし、あなたが敏感肌なら、「もうヒリヒリしない!あなたの肌にピッタリ合った敏感肌用化粧品の選び方」を読んでください。
あなたの肌に合った化粧品に出会える方法をご紹介しています。
私も敏感肌で、乾燥肌だったので、化粧品選びやケア方法にはとても苦労をしました。
そんな私の経験をまとめていますので、あなたの参考になれば幸いです。