つるつるすべすべなイメージのある赤ちゃんの肌。
しかし、実は赤ちゃんの肌はとてもデリケートです。
いつの間にか肌が荒れてしまい、どう対処すればいいのか分からなくなることもあるでしょう。
この記事では、3児の子育て経験やスキンケアアドバイザーの経験を踏まえて、赤ちゃんの肌によくあるトラブルやスキンケア方法をご紹介します。
その時になって慌てないよう、事前にチェックしておきましょう。
大切な赤ちゃんの肌を守りたい方、肌荒れの対処法について悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
1.大人の肌との違いは?赤ちゃんの肌の特徴
赤ちゃんのスキンケア方法を知るためには、まず赤ちゃんの肌の特徴を知っておきましょう。
赤ちゃんの肌は、大人と比べて
- 肌状態が変わりやすい
- 皮膚が薄くデリケート
という特徴があります。
大人とはちょっと違う肌状態なので、スキンケアのポイントが大人とは少し異なるのです。
そこでまずは、赤ちゃんの肌の特徴について詳しく説明します。
1-1.赤ちゃんの肌の状態は変わりやすい
赤ちゃんの肌状態は、お母さんのお腹から産まれてから成長するにつれ、どんどん変化していきます。
まず、産まれる前は子宮内の「羊水」と「胎脂」によって肌が完璧に守られている状態です。
そして、産まれると同時に乾燥した空気に触れさまざまな刺激を受け始めます。
生後2~3カ月の新生児期は、一過性の性ホルモンの増加により皮脂分泌が盛んに行われます。
そのため、新生児痤瘡や乳児脂漏性皮膚炎などができることもあります。
生後2~3カ月を過ぎる頃からは、急激に皮脂分泌が減り生涯で最も皮脂量が少ない時期を迎えます。
その量はわずか大人の約1/2~1/3程度。
この時期は、肌を構成する角質細胞や、うるおいを保持する物質なども少ないため、保湿機能やバリア機能が低下する傾向があります。
そのため、生後2~3カ月は特に乾燥などの外部刺激に注意すべき時期と言えるでしょう。
このように、赤ちゃんの肌は成長に合わせて変化していきます。
月齢ごとの肌状態を知っておけば、肌トラブルが起きても焦らず対処できるでしょう。
参考:地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 皮膚科 部長 馬場直子氏「丈夫な皮膚をつくる / 正しい保湿剤の使い方 乳幼児の保湿」、BeanStalk「赤ちゃんの肌のおはなし」
1-2.赤ちゃんの肌は皮膚が薄くデリケート
赤ちゃんも大人も肌の構造自体はほぼ同じです。
しかし、赤ちゃんの肌は大人の約1/2程度の厚さしかありません。
皮脂量が減少するのに加えて肌のうるおいをキープする機能も低いため、外部の刺激を受けやすくなっています。
つるつるすべすべで健康そうに見える肌でも、実はとてもデリケートなのです。
また、赤ちゃんは大人の2~3倍も汗っかき。
赤ちゃんも大人も汗腺の数は同じですが、赤ちゃんは体が小さい分単位面積当たりの汗腺数が多くなるため、汗の量も増えるのです。
汗は体温調節という重要な役割を担っていますが、中には自分の汗が刺激になってしまうケースもあります。
そのため、汗をかいたまま放置しておくとあせもやかゆみなどさまざまな皮膚トラブルに発展してしまう可能性もあります。
- 皮膚が薄く刺激を受けやすい
- 汗が多く肌トラブルになりやすい
この2つの理由から、赤ちゃんの肌は大人よりもデリケートな状態と言えるのです。
2.対処法や予防方法も!4大肌トラブル
つるつるすべすべなイメージとは裏腹に、実はデリケートで刺激を受けやすい赤ちゃんの肌。
うっかりしていると、気付かないうちに肌トラブルが起きてしまうかもしれません。
赤ちゃんによくある肌トラブルとしては大きなもので、以下の4つがあげられます。
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ここでは、これらの4大肌トラブルの症状や原因、対処法を解説します。
トラブルの特徴を知っておけば、赤ちゃんの肌に変化があったときにも冷静に対処できるでしょう。
参考: 日本アトピー協会「乳児湿疹」
2-1.乳児湿疹
乳児湿疹とは、新生児~1歳頃までにおきる湿疹や皮膚炎の総称です。
皮脂量が多い生後2~3カ月頃までは、以下の湿疹が多く見られます。
- 新生児ニキビ:額や頬にプツプツができる
- 脂漏性湿疹:眉毛や髪の生え際、頭皮、鼻の下にかさぶたやフケのようなものができる
これらは、子宮の中で胎盤から受け取った女性ホルモンが皮脂の分泌を促すことが原因だと考えられています。
また、中には首や背中など顔以外にできたり膿が出たりするケースもあります。
一方、皮脂量が減り乾燥しやすい生後2~3カ月以降は、頬や口回りがカサカサになったり赤くなったりする乾燥性湿疹が増える傾向にあります。
乳児湿疹を予防・対処するためには、いつも肌を清潔にすることが大切です。
よく泡立てた石けんで優しく体を撫で、汚れや余分な皮脂を落とししっかり洗い流しましょう。
かさぶたやフケのようなものが付いている場合は、無理に剥がそうとしてはいけません。
また、体を洗ったあとは、肌のバリア機能を高め乾燥から守るために保湿ローションやクリームなどを塗ると効果的です。
2-2.あせも
皮膚がデリケートで汗っかきな赤ちゃんは、あせもになることも多いです。
あせもとは、汗が汗腺をふさいでしまい炎症を起こした状態。
汗には尿酸やアンモニアなどの成分が含まれており、それが肌を刺激して炎症を起こしてしまうのです。
赤ちゃんはおむつを履いているうえ、自分で体勢を変えられないので特に注意が必要です。
あせもは汗をかきやすく蒸発しにくい首回りや手足のくびれ、肘や膝の裏、脇の下などにできやすく、主に次の3種類に分類されます。
- 水晶様汗疹:白く透明感のある小さな水泡ができる。ほとんどが自然に治る。
- 紅色汗疹:赤いプツプツができる。かゆみと刺激があるのでかきむしらないように注意が必要。
- 深在性汗疹:真皮に汗がたまり皮膚が部分的にもりあがる。日本ではあまり見られない。
あせもの対処法としては、こまめに汗を拭き取ったり着替えやおむつ替えをしたりすることが大切です。
たくさん汗をかいたときはぬるめのシャワーで洗い流すのも良いでしょう。
ただし、皮脂を洗い流しすぎると乾燥の原因になるので、石けんを使うのは1日1回にしてください。
洗ったあとの保湿も忘れずに。
また、衣服は通気性の良いもの選ぶようにしましょう。
なお、あせもは軽い症状でれあればセルフケアでも大丈夫ですが、かきむしって化膿したり発熱したりする場合もあります。
もし悪化してしまった場合は、小児科を受診しましょう。
2-3.おむつかぶれ
おむつがあたっている部分が炎症を起こしてしまうことをおむつかぶれと言います。
ウエストや太ももまわりなど、おむつの境目に炎症が起きるケースもあります。
おむつの中は体温で温かいうえ、汗や尿で湿った状態。
皮膚がムレてふやけたような状態になっているので、刺激を感じやすくなっています。
そのため、おしりを拭いたときの刺激やおむつと肌のこすれで炎症を起こしてしまうのです。
また、尿や便に含まれるアンモニアや大腸菌、消化酵素などが刺激になるのも原因のひとつです。
特に月齢の低い赤ちゃんは、排泄回数が多く便が緩いため注意しなければなりません。
おむつかぶれの症状としては次のようなものがあります。
- おしり全体が赤くなる
- プツプツとした湿疹ができる
- 皮がむけてジュクジュクする
かゆみや痛みを伴うため、おむつ替えやお風呂のときに痛がって泣くことがあります。
おむつかぶれを予防・対処するには、こまめにおむつを替え、常に清潔な状態を保てるように心がけましょう。
ただし、強くこすると肌を傷つけて悪化させる可能性があるため、シャワーで優しく洗い流す、柔らかいタオルで優しく拭き取るなど刺激を与えないように注意してください。
また、おむつと赤ちゃんの相性も大切。
肌ざわりが良く通気性の良いおむつを選び、サイズが合っているかをきちんと確認しましょう。
2-4.よだれかぶれ
よだれの刺激により、口の回りが赤くなったりプツプツができたり、かさついている状態をよだれかぶれと言います。
赤ちゃんは口回りの筋肉が未発達なので、口が開いてしまいよだれが出てしまうもの。
また、指を舐めたあとに顔を触ってよだれまみれになることも少なくありません。
よだれには食べかすや塩分、消化酵素などが含まれるため、赤ちゃんの肌に刺激を与えてしまうのです。
また、食べこぼしに含まれる卵や牛乳などのアレルゲンが原因で、アレルギー性接触皮膚炎を引き起こすケースもあります。
よだれかぶれを予防・対処するには、こまめによだれを拭き取るように心がけましょう。
このとき、熱いお湯で濡らしたタオルを使ったりゴシゴシこすったりすると、かえって肌を傷つけてしまいます。
よだれを拭き取るときは、濡らしたコットンやガーゼで優しく拭くか、常温に近いぬるま湯でそっと洗いながすようにしましょう。
また、皮脂を洗い流しすぎるのも肌荒れの原因になるため、石けんを使いすぎないようにしましょう。
そして、よだれを拭き取る、または洗い流したあとは、かぶれを悪化させないために保湿もしましょう。
ワセリンは刺激が少ないため赤ちゃんの口回りにも安心して使えます。
3.肌荒れから守る赤ちゃんのためのスキンケア方法
赤ちゃんを肌荒れから守るには、日頃から適切なスキンケアを行い清潔に保ってあげることが大切です。
また、乾燥によるダメージを防ぐためには保湿も欠かせません。
ここでは、洗い方と保湿方法に分けて赤ちゃんのスキンケア方法を紹介します。
3-1.赤ちゃんの洗い方
乳児湿疹やあせも、おむつかぶれなどの肌トラブルから赤ちゃんを守るためには、肌を清潔に保ってあげることが何より大切です。
というのも、赤ちゃんの肌は大人の1/2程度の厚さしかなくとてもデリケートなので、汗や尿、よだれなどで炎症が起きやすいからです。
1日1回のお風呂はもちろん、たくさん汗をかいたときや便で体が汚れてしまったときは、できるだけまめにお湯で洗い流してあげましょう。
赤ちゃんの顔や体を洗うときは、力を入れてゴシゴシこすってはいけません。
タオルやガーゼも肌を傷つける可能性があるので、できれば手でなでるように洗いましょう。
耳の後ろや膝の裏などは忘れがちなので、特に注意が必要です。
また、石けんやボディーソープは、たとえ赤ちゃん用であっても使い過ぎると必要な皮脂まで洗い流してしまうので、1日1回程度に留めてください。
3-2.洗ったあとの保湿方法
せっかくキレイに洗っても、肌が乾燥するとトラブルの原因になってしまいます。
そのため、顔や体を洗ったあとは、すぐに保湿をしましょう。
赤ちゃんでも使えるローションやクリームを塗って、水分と油分を補ってあげてください。
赤ちゃんの肌に保湿ケアを行うのは、1日2回がおすすめです。
もしすでに赤ちゃんの肌がカサカサし出していたら、1日3回行えると理想的です。
皮膚科医や薬剤師が行った研究でも、「保湿クリームの塗布は1回より2回のほうが皮膚のバリア機能がよくなる」という結果が出ています。
日皮会誌2012;122:39によると、「1日1回よりも2回の保湿剤塗布でより保湿効果が高く、塗布開始から1週間ほどで肌の水分量に差が出てくること、塗布量に応じて保湿効果が高くなることが報告されている。」と、あります。
そして、保湿のタイミングは、洗ったあとすぐです。
また、肌荒れしやすい口回りや首回り、足の付け根などは特に念入りに塗っておきましょう。
なお、保湿は年中必要ですが、特に空気が乾燥する冬場は加湿器などで湿度を保つことも効果的です。
赤ちゃんに使える保湿クリームについては、この記事にまとめています。
ぜひ参考にしてください。
関連記事:「あなたの赤ちゃんにピッタリな保湿クリームの選び方・おすすめも紹介」
4.肌荒れが治らない場合は小児科の受診を
赤ちゃんは大人よりも肌がデリケートなので、乳児湿疹やあせも、おむつかぶれなどさまざまな肌トラブルが起きやすいです。
改善されない場合や急な発疹、じんましんなどがた出た場合は小児科で受診しましょう。
赤ちゃん、特に5歳頃までの時期は肌のトラブルであっても、基本的に小児科の受診で大丈夫です。
小児科は子供の心と身体の相談窓口のような役割もあるので、気になることがあれば何でも相談してみましょう。
必要であれば、他の専門医や大学病院などを医師が紹介してくれるでしょう。
肌トラブルは、重症化すると家庭でのケアではなかなか治りません。
また、自己判断で薬を塗るとかえって悪化させる可能性があります。
通常のスキンケアでは対処できないと感じたとき、赤ちゃんがひどく痛がっているときなどは、早めに小児科を受診しましょう。
参考:和歌山県医師会「子どもの救急対応マニュアル」
5.赤ちゃんの肌荒れに関するQ&A
赤ちゃんにはさまざまな肌トラブルが付きものです。
少し肌が荒れたからといって慌てる必要はありませんが、親としては心配になるところです。
たとえば、「アレルギーの症状?」「これは赤ちゃんに使っていいの?」など、細かいことまで気になってしまうでしょう。
そこで次に、よくある赤ちゃんの肌荒れに関するQ&Aを紹介します。
赤ちゃんのスキンケアについて疑問を持っている方はぜひ参考にしてください。
Q1.アレルギーが原因の肌荒れはありますか?
A.赤ちゃんの肌が荒れると、「アレルギーかな?」と心配する方は多いです。
結論から言うと、アレルギー体質の赤ちゃんはアトピー性皮膚炎を起こすことがあります。
アトピー性皮膚炎とは、角質が乱れてバリア機能が低下し、細胞間脂質のセラミドが失われることで肌が極度の乾燥状態になる病気です。
肌表面が荒れるためアレルゲンが侵入しやすく、かきむしることによりさらに状態が悪化します。
アトピー性皮膚炎の原因としては、赤ちゃんの場合、卵や牛乳、小麦、大豆といった食べ物がほとんどです。
また、ほこりやカビ、動物の毛などのアレルゲン、寝不足やストレスなどが原因となることもあります。
アトピー性皮膚炎は乳児湿疹と混同されることもありますが、日本皮膚科学会では次のような診断基準が示されています。
- かゆみがある
- 典型的な場所に湿疹があること(乳児の場合、頭や顔から手足にかけて)
- 症状が長く続いている(乳児の場合は2カ月以上)
アトピー性皮膚炎になった場合、ステロイド剤や保湿剤での治療が必要です。
そのため、家庭でケアをしても湿疹が改善しない場合や強いかゆみがある場合は、小児科を受診してみましょう。
参考:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン作成委員会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018」
Q2.赤ちゃんの肌にワセリンを使っても大丈夫ですか?
A.ワセリンとは、石油から採れた炭化水素を精製したものです。
肌内部に浸透する力はありませんが、肌表面をしっかりとコーティングしてくれるので、乾燥肌や皮膚炎、やけどの保湿剤として広く使われています。
「石油から作られた」と聞くと、安全性に不安を感じてしまう方もいるかもしれません。
しかし、石油自体が天然由来の成分ですし、肌への刺激の少なさから医薬品としても使われています。
そのため、肌がデリケートな赤ちゃんに使っても問題はありません。
ただし、ワセリンだけで保湿しようと思っても、水分を補給することはできません。
十分な保湿をするためには、水分を含む乳液やクリームも取り入れながらケアすると良いでしょう。
Q3.母乳が原因で肌が荒れる可能性はありますか?
A.お母さんが食べているものが母乳に影響し、その母乳を飲むことで赤ちゃんに肌荒れが生じるという説があるようです。
しかし、母乳が肌荒れの直接的な原因になるといった事実はありません。
ただし、赤ちゃんが母乳を吐いたり口からこぼしたりして肌につくと、肌荒れにつながる可能性があります。
母乳に含まれる微量のタンパク質やよだれが、赤ちゃんの皮膚を刺激することがあるためです。
そのため、赤ちゃんの肌を健やかに保つには、母乳やよだれが肌に残らないようにこまめに拭き取ってあげることが大切です。
Q4.夏でも肌を保湿した方が良いですか?
A.保湿というと乾燥しやすい冬場をイメージするかもしれませんが、実は夏でも保湿は必要です。
たくさん汗をかく夏は、汗を拭いたり洗ったりする機会が多いため、バリア機能が壊れる可能性があるからです。
また、夏は紫外線も強くなるため、肌へのダメージも大きくなります。
夏に保湿をするときは、さらっとしたローションタイプもおすすめ。
べたつきが気になる方はローションタイプを、乾燥が気になる方はクリームタイプを重ねて塗りましょう。
まとめ
赤ちゃんの肌は大人と比べて皮膚状態が変わりやすくデリケートなので、乳児湿疹やあせも、おむつかぶれ、よだれかぶれといった肌トラブルが起こることも少なくありません。
肌荒れから赤ちゃんを守るためには、以下のポイントが大切です。
- こまめに洗ったり拭いたりして肌を清潔に保つ
- 冬でも夏でも保湿をする
- 刺激を与えないように優しく触れる
そして家庭のケアでなかなか改善しない場合や急な発疹など心配なときは、早めに小児科を受診することをおすすめします。