異端な社長が創る経営

BUSINESS

お客様にも従業員にも幸せや喜びを提供できる会社でありたい。

幼いころから「不条理なこと」が大嫌い。少年 “井上龍弥”は、様々なきっかけや出会いを通じて会社経営に興味を持つようになりました。やがて大人になり、社会人経験を経て2000年にアースケアを創業。会社設立から20余年を経た今、
社長 “井上龍弥”として、人生を振り返りながら経営に込める想いを語ります。

井上さんは変わっていますね。経営者仲間からよくそう言われます。

自分としてはそんな変わっているつもりはなかったんですが、
最近ようやく分かってきました。

幼少期から今に至るまでの経験が、
経営や商品に対する自分の考え方につながっているんです。

ちょっと長くなりますが、自分の経験のどういうところが
アースケアの経営につながっているのか、
経営に込める想いととともに振り返りました。

・物事や課題の本質をとらえるために徹底的に調べ尽くす
・ものづくりには原理・原則がある
・仕事は人生の一部だから楽しくあるべき
・経営者の判断が人を幸せにもするし不幸にもする
・ウソをついてまで商売をしたいとは思わない
・社員がいきいきと働ける環境こそが良い商品づくりにつながる

私は小さい頃から「なんで?」「どうして?」と思ったことに対しては納得いくまで突き詰めないと気が済まない性格でした。

たとえば、義務教育だから勉強する。
ゲームばっかりやっているとアホになる…。

周りの大人から押し付けられるこういった価値観に対して、「なんで義務教育だからって勉強しないといけないの?」「勉強って将来何の役に立つの?」とストレートに疑問をぶつけていましたね。

でも、誰からも明確な答えは返ってきませんでした。

幼いながらに、「きっと誰も答えを分かっていないまま、“当たり前のことだから”というだけで言っているんだろうな」と感じていましたね。

だからこそ私は、「物事の本質的な部分まできちんと説明できる人間になってやる」と強く思いました。

自分の頭と足を使って徹底的に物事を調べ上げ、納得いくまでやり尽くすのは、この時の経験から来ていると思います。

私が小学生の時に一番驚いたのが、テレビにつないでゲームができるコンピューターの登場です。

当時、コンピューターと言えば60万円~70万円と高額なもので、今のパソコンよりもはるかに大きく、画面に表示される色も単色で、処理スピードもすごく遅かったんです。

そんな時代に、テレビにつないでゲームができるコンピューターがなんと1万円台で発売され、キャラクターも背景も色鮮やか、しかもボタン操作でスムーズに動く。

本当に意味が分かりませんでした。「こんなすごいものが作れるんだ」と純粋にびっくりしましたし、“ものづくり”って面白いなと思いました。

自分にとってコンピューターは遊び道具というよりも、最先端の技術を学ぶための道具でした。

どういう構造、どういう理屈で動いているのかを知りたい気持ちが強かったですね。

でも、この考え方は大人には全く受け入れてもらえませんでした…。よく「ゲームばっかりやってたらアホになる」と言われていたのですが、「今に見とけよ、オレはゲームが将来の役に立つことを証明したるからな」。
そう心に誓って、一生懸命ゲームをしていましたね(笑)

この時の経験は今の仕事にも役立っています。

後で触れる「ものづくりには原理原則がある」という考え方なのですが、どのような商品であれ、企画・開発・試作・生産というプロセスをたどります。

中でも最初の「企画・開発」が重要で、そこに徹底的にこだわれば良い商品ができるというのは、ゲームから得た学びですね。

今だから言えるのですが、実は中学生の時からアルバイトをしていました。家が貧しかったというのもありますが、「働いてお金を稼ぐとはどういうことなのか?」というのを、身をもって体験してみたいという気持ちが強かったからです。

近所の町工場を転々としながら働いており、行く先々で可愛がってもらいました。工場の社長さんや従業員の方々と仲良くなり、お金だけでなくお菓子や飴玉をもらえたのは今でも懐かしく思い出されます。

仕事というは対価としてお金をもらうだけのものではなく、人と人とのつながりで成り立っていること、少しの工夫でも人に喜びを与えられる楽しいものであることを学びました。

アルバイトは良いことばかりではありませんでした。当時大ヒットしたゲームの製造工場で働いていたのですが、1年ほどでブームが去ってしまったんです。

工場は1年の間に大規模な設備投資をしていたため、ブームが去って需要がなくなると急激に業績が悪化し、最後は倒産してしまいました。

その光景は本当に悲惨でした。仲良くしてくださった社長さんの憔悴しきった顔。

社長さんを慕っていたのに、文句を言い連ねて会社を去っていった従業員の方々。「ああ、会社の倒産は、多くの人の幸せを奪うんだな。」と実感しましたね。

それと同時に、「もし自分が経営をするとしたら、みんなが幸せであり続けられる会社にしたい」という気持ちも芽生えました。

この気持ちが、アースケアの経営の礎になっていると思います。

大学時代は飲食店でアルバイトをしていました。

将来的には起業する気満々だったので、なるべく店のオーナーや経営者に近いレベルで仕事をすることを目標にしていました。

最初は苦労しましたが、大学3年生の頃にはメニュー開発や仕入れ、入金なども任せてもらえるようになりましたね。

このまま自分で飲食店を開業しようかとも思ったのですが、店舗商売では座席数によって売上の上限が決まってしまう点、冷凍在庫の保管に大きな場所と費用がかかる点、廃棄ロスが発生する点などがデメリットだと感じたため、次の可能性を探りました。

おぼろげながら頭に浮かんでいたのは、「店舗の制約がなく」「商品も小さく」「消費期限が長いもの」です。

実はこれが今のアースケアにつながるのですが、それはもう少し後の話です。

起業する前に社会について学んでおきたいという想いもあり、大学卒業後は建築会社 → 健康器具の販売会社 → 携帯電話の販売代理業と渡り歩きました。

この時の経験が「商品開発に込める想い」につながってゆきます。

そして最後に、自分の運命を大きく変える化粧品メーカーと出会いました。

もともとは携帯電話の販売代理業で一緒に仕事をしていた人に誘われたのが化粧品メーカーに就職したきっかけでした。

当初は「男性の自分が化粧品?」という想いでしたが、実は私自身、超が付くほどの乾燥肌・敏感肌だったんです。

「もし自分の肌の状態を改善できる化粧品を作ることができたら、同じ悩みを抱えている人たちの役に立つかもしれない」。

心が躍りましたね。

当時インターネットが普及し始めた時期でもあり、店舗を持たなくても商品を販売できる時代が訪れようとしていました。

大学時代におぼろげながら思っていた「店舗の制約がなく」「商品も小さく」「消費期限が長いもの」。

化粧品はこの条件にもピタッと一致していました。

元々は営業力を買われての入社だったのですが、会長や工場長に頼み込んで開発・製造現場の仕事にも従事させていただきました。

ベテランの職人さんには「忙しいからお前の相手をする時間はない」と言われていたのですが、「じゃあ仕事が終わった後や休みの日に化粧品や化学について勉強させてください!」と。若いから勢いがありましたね(笑)

優しい方だったので、半年間つきっきりで本当にたくさんのことを教えてくださいました。

この時に分かったのが、化粧品に限らず、「ものづくりには原理原則がある」ということです。

もちろん知識では専門で学んでいる方にはかないません。でも、原理原則が分かれば、あとはそれをパズルのように組み合わせれば良い商品を作ることができると確信しました。

入社1年後には子会社の社長を任せていただくなど、本当に貴重な経験をさせていただきました。

その子会社は業績が芳しくなく、私が社長になった時には会社としての貯金が50万円ほどしかありませんでした。

元手がない中でも創意工夫を重ねて販売代理店網を築き、売上は回復しました。仕事としての手ごたえを十二分に感じることができましたね。

あることがきっかけで会社を去ることになったのですが、その時にはアースケアを立ち上げようと心に決めていました。化粧品メーカーを起業するとなると、自分が築いた販売代理店網は大きな武器になるのですが、それは会社にお返ししました。

全てゼロからスタートしたい。自分ならできるという自信があったからです。

アースケアを創業して、まずは自分が作りたい商品を開発・製造してくれるメーカーさんを見つけるところから始めました。が、すごく難航しました。

今思えば当たり前なのですが、20代の若者が突然「化粧品を作りたい。協力してほしい。」と言っても、その会社にとってはリスクしかないですよね。

やっとのことで担当者に会えたとしても、その場で名刺を捨てられてしまうことさえありました。

それでも、私の想いを汲んでくださって協力していただける職人さんと出会うことができました。

商品には絶対の自信がある。当時まだ黎明期だったインターネット販売なら、店舗がなくてもたくさんの人が買ってくれる。よし!これで行ける。

結果は散々でした。思った通りに売上が伸びないのです。気づけば貯金は5万円になっており、倒産を覚悟しました。

その時に支えてくださったのがお客様です。この経験が「お客様に込める想い」につながっています。

また、経営者である自分が判断を誤れば、社員の幸せすらも奪ってしまうことになります。

自分たちの身の丈に合わせて、自分たちのペースで成長してゆく。そのためにも、お客様からの信頼は欠かせません。

社員がいきいきと働くことで商品・サービスの質を高め、お客様に喜んでいただく。

それが結果として会社の安定につながり、社員の幸せにもつながる。

この循環を維持し続けることが、社長である私の使命だと考えています。